扉あければ、 (ページ1)

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◎ 笑顔弁当 / red . ページ1

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「.........ああ疲れた、もう無理」

定時からほぼ3時間を過ぎた辺り、誰もいない社内で

青白く光るパソコンの画面と睨めっこ。

東京の本部から大阪まで転勤してきて1年が経つ頃、
最初こそは大切に扱われたような気もするけれど今では私だけが残業祭り。

最近流行りのコンビニ飯とかなんとか言うけどそんなものにはもう飽きた。

「......もういいや、帰っちゃお」

しつこいくらいデータを保存してから電源を落とし、

駆け足で社内から出ると外の冷たい空気に当たる。

キラキラ光る大阪の街。

「......まだどこも行ったことないなあ」

耳にはめたイヤホンからは「恋しくて憎らしい大阪」なんて歌詞の歌が流れてくる。

こんな状況でこの場所が恋しくなるのだろうか

街灯のない通りでそんなことを考えていると一筋の光が差し込んでくる

光になれてない目を細めながら掲げられた看板に目をやる。

「弁当屋スマイル」

古びた看板にはそう書かれていた。

こんな店あったっけ.....？

不思議に思いながらも手を扉に伸ばす。

「.......! いらっしゃいませ」

驚いたような表情を見せたあと少し鼻にかかった甘い声で、「いらっしゃいませ」と微笑む。私をとろけるように包み込むその声にはひどく安心した。

小さめの店内にはカウンターとイス、

紙パックのジュースが入った小さな冷蔵庫があった

徐(おもむろ)にカウンターへと行くと、
さっとメニューを差し出される。

「...........あ、...」

「.......どうかしました、?」

お礼を言おうとして見上げると思った以上に

店員さんは整った顔立ちでびっくりする

「......あ、、いえなんでもないです。すみません」

熱くなった顔を隠すようにメニューに目線を下げると

「笑顔弁当」という文字が目に飛び込んできた

下にはそれより小さめに「貴方に笑顔を届けます」そう書かれていた。

「決まりました?」

「えと、笑顔弁当ひとつ下さい」

「わかりました!」

またニコッと笑った店員さん、これが笑顔弁当の笑顔....?

「あ、すんません15分くらいかかるんで!座って待っとってください～」

まだ聞きなれない関西弁と
卵をかき混ぜる音、じゅわっと油が広がる音

きっときっと、美味しいんだろうなあ

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