橙色の空の下で。3

#43 ページ43

西島side.

俺はどうやら、史上最高の馬鹿らしい。




25歳にもなって気持ちのセーブも上手くできないとは。




あ、一つ訂正をしておくとAの顔を覗き込んだのはキスをするためじゃない。





家に来てから、というか、エレベーターで会った時からAが一度も俺と目を合わせないから、何かあったのかと思って顔を見てみただけ。




そう、見てみただけだった。




なのに、頬を染めて「近い」だなんて上目遣いされたら流石に俺の理性も吹っ飛ぶわけで。





…せっかく、一緒に仕事できるかもしれないって所まで来たのになぁ。





俺らは何かしら問題起こさないと会えないのか。





…今回に関しては完全に俺が悪いけど。





けど、Aだって悪いと思う。





俺のこと待たせすぎなんだって話。




9年避けられて、やっと会えたと思ったら半年放置。





かと思えば、放置の末、俺を驚かせるためにavexに入ってるなんて。






年下のくせに、いとも簡単に俺を惑わせる。






俺の中のAは、俺の後ろをひょこひょこ歩いて、ただ俺や陽紀の背中を追いかけてる妹のような存在だった。






なのになぁ。






俺が思ってた何万倍も魅力的な女性になっちゃうんだから。






敵だって多くいるはずだ。






Aは超がつくほど鈍感だから、気づいていないだろうけど。





だから、俺の気持ちなんて分かんないって言うんだろうな。





周りから見たら俺の気持ちなんてだだ漏れだって言われるだろうに。






でも、Aは何も経験して来なかったんだ。







恋も、キスも、なにもかも。






俺と陽紀の寵愛を受けて育ったんだから当たり前なのかもしれないけれど。






そんなAのファーストキスを奪ってしまったらしい。






いや、子供の頃から妹のように可愛がっていたから陽紀と2人でちゅーって遊んでいたけれど。

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