橙色の空の下で。3 (ページ40)

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「けど、事情聴取は逃れられないよ？まずは今日本社にいた理由を教えなさい。」

「それは、今年の春からavexの社員だからです。」

表情は柔らかくても語尾が命令形だからか、思わず敬語で答える。

「なんで入る前に言ってくんないの？」

「それは…、」

「それは？」

「驚かせたかったから、です。」

恥ずかしくなって下を向きながら言う。

誰が聞いても子供染みた理由だと思うだろう。

「あっははは…っ！そんな理由で言わなかったの？なーんだ、俺そんなことも言ってもらえないくらい嫌われてんのかと思ったじゃん」

「それはちが…！」

「あはは、分かってるって。十分驚いたよ。あんな驚いたの久々よ？去年AにAAAのことよく知らないって言われた時以来よ？」

うっ、と言葉に詰まる。

それを出されてしまうと何も反論出来ない。

我ながら本当に酷いことをしたと思う。

けど、ううん、だからこそこれからのたかちゃんの音楽人生に携わりたくてavexに入社したのだ。

AAAのことを調べて知っていく度に、AAAに"AAA西島隆弘"に感動したから。

「そーんな困った顔しない。目に入れないことができないくらいでっかいアーティストになるんだから。てか、部門どこなの？」

「企画部門だよ。ライブとかイベントとかに携わりたくて。」

「え、まじで？一緒に仕事できるかもしれないの？いやあ、それは嬉しいね。ほんと嬉しい」

たかちゃんの魔法なのか、素直に言えないと思っていたことまですらすら言ってしまう。

っていうか、嬉しそうな顔をされたら照れるんだって。

目の前に座っているのに直視できない。

…どうやら恋というものは忙しいらしい。

それが恋と気づくまではもやもやしたり自分なんてって卑屈になったりして。

恋と気付いたら相手が何倍も輝いて見える。

「っていうか、なんでさっきからずーっと下向いてんの？おーい、俺まさかほんとに嫌われてる？」

そう言ってわたしの顔を覗き込む。

「ちょっと、ま、近い…！」

覗き込むたかちゃんの顔は目の前に、そして唇がつきそうなくらいに顔が近づいてきて。

…って、え？顔が近づく？

そう思ったのも束の間。

わたしの唇からは彼の体温が伝わってきた。

泣きたくなるくらい、温かかった。