#40 ページ35
ほら。
年下の優しさに甘えているのに、こんな優しくしてくれる。
真司郎はそういうやつなのだ。
「んー、一緒に飲めないかなぁと思ってさ。」
『おー、全然ええで。あ、けど、ラフな格好に着替えてしまったから俺ん家の近くでいい?』
「全然大丈夫、じゃあ今から向かうね。」
『はーい、じゃまた後で』
真司郎のその一言で電話は切れた。
真司郎のところへ向かう間も心中は穏やかではなく。
それはお店に着いてからも変わらなくて。
私を見つけた真司郎は困ったように眉を下げて笑った。
「何をそんなに悩んで…って、にっしー以外にいないか。愚痴なら聞くで?そのために俺選んだんやろ?」
やっぱりバレてたか、と思わず苦笑いがこぼれる。
だめだな、にっしーのことになると全然だめ。
本当は人に頼るような事じゃないのに、真司郎に迷惑かけてばっかりだ。
席に腰掛けながらため息が漏れる。
「こら、般若みたいな顔してるで。話したら少しは変わるかもしれへんよ?」
眉間をぎゅーっと人差し指で押される。
いつもと変わらないどころかいつもより優しい真司郎に安心して、ぽつりぽつりと話し始める。
「さっきね、Aちゃん…佐野さんに会ったの。」
「佐野さんってあのにっしーの幼馴染の?」
コクっと頷く。
「Aちゃんやっぱりにっしーのことが好きだった。純粋に、素直に。」
どうしよう、泣きそうだ。
零れそうになる涙を堪える。
「私、『真っ向勝負できるね』なんて言っちゃったんだよね。メンバーっていう特権を駆使しようとしてたくせに。だからね、彼女の真っ直ぐさが痛かった。」
そう、痛かった。
私だって真剣で、にっしーを好きなのは決して遊びじゃない。
何年も苦楽を共にしてきた中で芽生えた気持ちだ。
じゃあ、Aちゃんの気持ちは?
私が苦楽を共にしたのなら、彼女は日常を共にしてきた。
Aちゃんが9年間のブランクを怖がっているように、にっしーとAちゃんのその現実は私にとって痛かった。
その現実も、Aちゃんの想いも全部痛かった。
「宇野ちゃん、それ当たり前やで。」
真司郎はあっけらかんとした顔で言う。
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ちさき(プロフ) - かたつむりんさん» ご指摘ありがとうございます! (2017年10月19日 19時) (レス) id: 6dce23e467 (このIDを非表示/違反報告)
ちさき(プロフ) - ドリーさん» ご指摘ありがとうございます! (2017年10月19日 19時) (レス) id: 6dce23e467 (このIDを非表示/違反報告)
かたつむりん(プロフ) - オリジナルフラグ外してくださいね! (2017年10月19日 19時) (レス) id: f35d15b5f6 (このIDを非表示/違反報告)
ドリー(プロフ) - オリジナルフラグを外して下さい!運営によって削除される可能性があります! (2017年10月19日 17時) (レス) id: 5e3261a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちさき | 作成日時:2017年10月18日 18時