橙色の空の下で。3 (ページ30)

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そんな私の心情を知らないたかちゃんは、

「一緒に頑張りましょうね、それでは」

と言って、もう一度わたしを見ると他の人には分からないようにわたしにアイコンタクトしながら、パンツのポケットのあたりをトントンと叩いた。

…ポケット？

わたしも今日はパンツスタイルだから、ポケットのあたりを探ってみる。

…なるほど、ケータイか。

よく気づけたな、と我ながら感心する。

オリエンテーションが終わったら見てみよう。

その後は誰にも会うことなく、スムーズに終わった。

オリエンテーションが終わった後、新入社員の中にはたかちゃんの大ファンの人が何人かいたらしく、先程のたかちゃんの登場を思い出して、感極まって泣いてる人も見受けられた。

そういう人を見ると、凄い人になってたんだなぁと他人事に思う。

…って、そうだケータイ見なきゃ。

急いで見てみると、案の定メールが来ていた。

ねえ、ちょっとお嬢さん
聞きたいことが山ほどあるんだけど？
とりあえず今日の夜、飯一緒に食お
俺からAの家出入りすんのは結構危険だから、俺の家に来てくれる？
そんなに長引く仕事じゃないから19:30くらいに家来て

緩む口角を必死に抑える。

本当はわたしの方からびっくりさせたかったけれど、バレてしまってはしょうがない。

夜ご飯を誘ってもらえただけで、バレたことに対する拗ねは消え去った。

単純だなと思うけど、嬉しいものは嬉しい。

就活に一生懸命で、8カ月近く会ってなかったのだ。

口を滑らせてポロッと言っちゃったらまずいと思ってメールも至極端的に返してたし。

指定された時間まではまだ少し時間があるから、なにか美味しいものを買っていこう。

あっと、その前に返信しなきゃだよね。

りょうかいです
私も話したいことたくさんあるんだ
美味しそうなもの買ってくね

…どうやらわたしはメールが苦手らしい。

友達とのメールならもっと楽しそうな文面になるのに、たかちゃんだとどうもダメだ。

これじゃ、就活中と何ら変わりない。

でも、これでも頑張った方なのだ。

すこーしは自分の成長を認めてやるか。

ドクンドクンと大きな音を立てて心臓が鳴る。

最近静かだった私の心臓は夜が楽しみだからなのか、また煩さを取り戻していた。