橙色の空の下で。3

#31 ページ12

たしかにいつもに比べたら何百倍も忙しいけれど、別段いつもと変わらない日。




昨日の出来事なんて無かったかのように、時間が過ぎてゆく。





昨日は一日があんなに長かったというのに、今日は気づいたらもうバイトを上がる時間になっていた。






「佐野ー、昨日に引き続きお疲れ様な。AAAのメンバーさんの中で佐野の評判良かったらしいぞ。お茶出し効果だな！俺に感謝しろよ？」





お茶出し…。




できればもう聞きたくなかった単語だ。




この謎の仕事を任されたから、昨日一日があんなにも長かった。




そんなことは微塵も知らない田端さんはにこにこしながらそう言う。




もちろん感謝の気持ちもあるけれど、罵りたい気持ちもあり、でも店長にそんなことは言えない手前、





「あ、ありがとうございました…？」





疑問形で感謝の意を伝えることにした。




忙しさからきた変なテンションってやつだ。




「いや、なんで俺に聞いてくるんだよ。…ってそうだ。この二日間かなり忙しかったから、明日明後日とシフト入ってたけど、佐野オフな？」




田端さん…！




罵りたいなんて言っちゃってごめんなさい！




なんて良い店長さんなんだ。




「佐野のそんな嬉しそうな顔初めて見た…。よし、ゆっくり休めよ。お疲れ様な。」




普段、嫌悪感以外を顔に出さないタイプだけれど、今回ばかりは嬉しさが前面に出てしまった。





「ありがとうございます！！お言葉に甘えさせていただきます！！おやすみなさい！！」




そう言うや否や、変なテンションとやらと共に昨日からフル稼働だった頭と体を休めようと上機嫌で家に向かった。

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