番外編＊優しい手 その�� （中堂視点） ページ31
「やる、飲め」
買ってきたものの中からスポーツ飲料水を取り出し、Aの目の前に置く。ゆらりと身を起こした彼女が力なくペットボトルの蓋を開け、ゆっくりと口を付ける。
「口を開けろ」
ペンライトと割り箸を使い、彼女の口内を診る。……扁桃腺の腫れはそこまで酷くない、喉の赤みも……
「……ウイルスによる風邪じゃないな、疲れが出たんだろう」
「ふふ、お医者さんみたいですねえ」
「法医学者だ」
ライトを仕舞い、所長室から俺の一番あたたかい上着を取る。椅子に座りぼうっとしている彼女の肩に羽織らせた。
「……送ってやる。立てるか」
「………」
「A？」
膝立ちの状態で、反応の無い彼女の正面に回り込み、彼女を見上げる。すると、ふっとその影が揺らいだ。
「……っ！」
こちらへ倒れてきた彼女の身体をなんとか受け止める。
「………はあ、はあ……」
呼吸が荒い。その瞼は固く閉じていた。先に薬を飲ませてしまえばよかった……この状態で送り届けるのは無理だ。第一、俺は彼女の家を知らない。三澄からひとり暮らしだと聞いているが……
「……なかどう、せんせい」
「……なんだ」
寝言か？ 腕の中の彼女の身体が熱い。その小さな背をゆっくりさすってやると、彼女はふたたび、ゆっくり言葉を紡ぎ出した。
「………ちゃんと、ごはん……食べてますか……」
「……ああ。お前の作る飯が美味いんでな」
「明日は……何を作ろうかなあ……」
「……まずは休め。お前がいなくなると困ると言っただろう」
「……何を作れば、喜んでくれるかなあ………何を、すれば……」
(………？)
「中堂先生は、笑ってくれるかなあ………」
「……A」
彼女がゆらりと頭をもたげる。机の上の灯りが逆光になり、彼女の顔はあまりよく見えない。ただ、熱のせいかいつもより潤んだ瞳に、俺が映り込んでいた。
「……中堂せんせい」
「っA！」
結局何も言わないうちに、彼女は意識を失い、ふたたび俺の胸に倒れかかってきた。
熱でうなされ、不安げな声を発するA。……今のことも起きたら覚えていないだろう。
なぜ無理をする。身体が不調を訴えていたのにも関わらず業務に徹し、周りには平常通り笑顔を振りまく。身体が限界になるまで。ここにはお前のいとこも、お前を可愛がる先輩も、お前に信頼を寄せる同僚も、俺もいる。彼女のしっかり者の性格がそうさせているのか……今まで同じように、どんなことを抱え込んできたのか。
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理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (9月18日 15時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新されないんでしょうか？ (2018年3月17日 3時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
atori(プロフ) - りなさん» コメントありがとうございます！書いてアップしたあと読み返して、ストーリー構成の粗さに自己嫌悪するばかりでございます……それでも、楽しんで頂けているなら本当に嬉しいです。応援ありがとうございます！頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願い致します！ (2018年2月21日 19時) (レス) id: ed335d1376 (このIDを非表示/違反報告)
りな - オリジナルストーリーとても面白いです！！続きが待ち遠しいです！！更新頑張ってくださいね！応援しております！！ (2018年2月21日 13時) (レス) id: 8a0990f49a (このIDを非表示/違反報告)
atori(プロフ) - 通りすがりの女ですさん» コメントありがとうございます！応援頂けてなによりです。これから頑張って面白くしていこうと思っているので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年2月19日 15時) (レス) id: ed335d1376 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：atori | 作成日時：2018年2月19日 3時
