今宵は月が赤いですね。光ノ章

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私はたぶんチートじゃない。

多少運動能力は上げられてるけど、
3年経っても平隊士のまんまだから。


それでも私は救わなきゃいけない。
限られた力で守るべきものが沢山ある。

それが私の、全うすべき責務だと信じる。




「もう一つは？」


『急かさないで下さいよ…』




でも、ちゃんと聞いてくれてる。
この人は怒ると思ってたから嬉しいな。




『───赤い月を、上弦ノ壱に見せること』




黒死牟はそれなりに辛い過去を背負ってる。

年下の兄弟に引け目を感じるってのは、
現代にもあるから理解しやすかった。


でもあいつは玄弥と師範を連れて逝った。
残った柱の2人にも、大きな傷を負わせてる。

どうしても許せない。



皆はきっと、狙うは無惨なんだろう。
だけど私は違うかもしれない。

まず、鬼を狩る目的が根本から違う。

それに私は無惨と同じくらいには
黒死牟に強すぎる恨みや憎悪を抱いてる。


だから上弦ノ壱戦には私も必ず参加したい。
この手で、黒死牟に死の月を見せてやる。




「…前々から思っていたんですが、なぜ貴女はそれほど赤い月に執着するのですか？」


『話せば長くなりますけど…？』


「ぜひ」




赤い月といえば174話、赤い月夜に見た悪夢。
ここで黒死牟は縁壱に殺されかける。

そのとき見えていたのは赤い月。
他でもない、黒死牟の死の象徴ではないか。

それに、縁壱の刀も赤だった。
師範の刀も最終的に赤く染まった。




『赤はあいつを滅する色……』




私の刀は師範と同じ真っ白な刃。
いわば私は普通の月光だ。
それを赤に変え、皆であいつを討つ。

それが私の、ここで生きる2つ目の目的。




「…赤い月を見せるというのは」


『今、新技を開発中なんです』




1年半ほど前から考えてる。
私の生きる原点を形取った零ノ型。

だけどたぶんそれは不可能だと思えてきた。
きっとその技は、私だけでは出せない。


私1人では赤い月を作り出せない。




「…師範の霞と掛け合わせたいんですけどね」




今そんな練習をするのは簡単じゃない。

私の力を出来るだけ高めておいて、
里編が終わった時に急ピッチで完成させよう。




「どうしてまた…、無一郎なのかな？」


『赤い月は現実にあります』




6月の満月はネイティブアメリカンの間で、
「ストロベリームーン」と言われる。

野イチゴが取れる季節らしい。
まぁそれは関係ないんだけど。

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