今宵は月が赤いですね。霞ノ章

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「はい、出来たよ。
移動中も絶対安静に頼むね」


『すみません、ありがとうございます』




てっきり蝶屋敷に行くのだと思ったら、
任務先の町の小さな病院に着いた。

といっても私は寝てたけど。









「…ぇ、ねぇ、ねぇ！」


『ふぇっ？』


「柱の背中で寝るとか…。
もうほんとに凄いよね君。その肝の据わり方は素直に拍手してあげたいな」


『ありがと…』


「…誉めてないんだけど」




眠くて頭が回らないんだよ。
あれ、ここどこだ。




「任務先の病院も把握してないとはね」


『え？』


「思った事すぐ言う癖直した方がいいよ」


『えへへ…』




でもやっぱり、むいくんは優しい。

普通にすやすや寝られてたもん。
それだけ揺らさないでくれたって事だ。




「…はぁ。背負い直すよ」




ずり落ちてきた私の体を持ち上げて、
明かりの灯っている硝子窓を叩く。

すぐに白衣のおじさんが出てきた。




「おや、鬼狩り様でしょうか？」


「…うん。怪我人なんだけど」


「！！ どうぞこちらへ」





で、冒頭に至る。


椅子に座ってニコニコする先生、

ベッドに腰かけて震える私、

それをえげつなく睨むむいくん。




『ごめんなさい…』


「ほんとに。とんだ迷惑」


『返す言葉もない…』

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