35 ページ39
◇◆◇
『ど、どうしたんですか?らしくないですよ』
平隊士が柱に頭を下げさせている。
端から見たら普通にそう誤解される状況だ。
それに謝られるようなことをされた覚えもないし、逆に私の方が何かしてる気がするのに。
「君を理解できずに、あの時俺は……」
『あぁ、気にしてないですよ〜!』
任務前日、私は兄貴に計画を伝えた。
猗窩座と戦わない、逃がすことも含めて全部。
もちろん怒られた。怒鳴られた。
挙げ句の果てには思いっきり殴られた。
目の前で彼に似合わない罵声を浴びせられ、
正直ものすごく怖かったけど、泣かなかった。
だって当たり前のことだから。
「君が本気だと分からなかった。女子の顔を傷つけてしまい、本当に申し訳ない」
『全然です。気にしてないし忘れて下さいね』
むしろその反応こそ柱の鏡だと思う。
あの時むいくんにもどれだけ怒られたか。
『帰りましょう。兄貴の家に』
「…あぁ」
槇寿郎さんや千寿郎くんのいる煉獄邸へ。
貴方の思いを、貴方の口から伝える為に。
「時透少年も、一緒に来ないか?」
「…別に、どちらでも」
「なら来なさい!弟の料理は美味いからな!」
疲れた私は兄貴が背負ってくれた。
代々受け継がれる炎柱の羽織も、
今は私の背中にのって私を包んでくれている。
『疲れたなぁ』
「…ねぇ、君さ」
黙って横を歩いてたむいくんが呟いた。
拳を握りしめ、下を向いて。
何を話されるのかと身構えたけど、
それに続く言葉はなかなか発されない。
「どうした、時透少年」
そっぽを向いて口を開かないむいくんに、
兄貴が優しく問いかける。
むいくんがこっちを向いた。
目が少し赤くなってて、拗ねたような顔。
キッと私を睨んで、まくし立ててきた。
「無茶なんだよ、見ててハラハラする。
もっと自分も大事にしてよ、
僕達ばっかり気にして自分は2の次でさ。
下手したら死ぬかもなのに1人で突っ込んで。
鬼殺隊なら殉死なんて当たり前なのに、
君がすると思うと辛くてたまらない。
何なの君。
僕も分からない、自分の気持ちなのに。
君を見てたら自分がおかしくなりそう……」
泣いていた。
ブカブカの袖で顔を隠していたけれど、
頬を伝う涙が見えてしまった。
114人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さつむいこん(プロフ) - 楪日織さん» もう26位まで落ちてるわ…、見たかったな。忙しいのにわざわざ報告ありがとう〜! (2021年7月1日 21時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - 鬼滅タグランキング今1位だよすごい……!おめでとうさつむいこん!! (2021年7月1日 20時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ハイキュー!!さん» 私にとってはハイキュー!!さんが優しすぎて尊いです。ありがとうございます! (2021年6月15日 22時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー!! - 尊さの塊ですね! (2021年6月15日 19時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki(プロフ) - さつむいこんさん» こちらこそ!これからも頑張ってください!応援してます! (2021年5月28日 16時) (レス) id: d652f69505 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年2月7日 8時