今宵は月が赤いですね。霞ノ章

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他の鬼など比にならない再生の早さ。

空気をも揺らす圧迫感。



これが、上弦。





「なぜ手負いの者から狙うのか理解できない」




勿論、１番反応が速かったのは兄貴だ。
少し遅れてむいくんも刀を抜き、横に並ぶ。

私も急いでそれに続こうとした。





「君は下がってて」


『ど、どうしてですか？上弦ですよ』


「だからだよ。足手まといでしかない」




邪魔物扱いをされ不貞腐れた私。
こちとら異世界者の微チートだぞ。

だけど、すぐに彼の本心が分かった。


右手で刀を構えているけど、
もう片方の手はそれに添えられてない。

かわりに、私の前に動かされた。
まるで庇うように、前に行かせないように。
その手は少し震えてた。



「………」




むいくんは今も、猗窩座しか見ていない。
今にも飛びかからんばかりに体勢を低くして、いつ移流斬りが出てもおかしくない。

なのに、私を守ってくれてる。
戦場なのに頬が緩む。嬉しくなっちゃう。


だからズルいんだ、この人は。
たまに、極々たまにお砂糖を混ぜてくる。
いつも苦いブラックコーヒーみたいなのに。
不意打ちで角砂糖やミルクを入れてくる。




兄貴と猗窩座があの語り合いをしている。
価値観がすれ違うだけの、淡々とした話。





「この少年は弱くない 侮辱するな」





もうすぐ羅針盤が張られる。
あれが出れば入り込む隙がなくなる。

ごめんねむいくん。
庇ってくれたけど、守ってくれたけど。


君と兄貴を私も守るの。




『猗窩座ーーーーっっ！！！』




こちらは真面目なお話の真っ最中である。
兄貴の、後々まで語られる感動的な話に、
猗窩座も一応耳を傾けていた。

そこをぶったぎっていく私。
鬼より空気が読めない人間である。

ごめんね煉獄の兄貴。
帰ったらさつまいもご飯ご馳走するよ。




「なんだお前は」


『鬼殺隊丁(ひのと)、Aです〜』


「話の邪魔だ。女は下がってろ」


「A、危険だ！下がれ！！」




兄貴が必死に叫ぶのも当たり前。
現在私は２人のちょうど真ん中にいた。

猗窩座がその気になれば、
いつでも攻撃できるくらいの近い所。




『ねぇ猗窩座、私ともお喋りしようよ』


「煩い黙れ。話しかけるな」


『私だけ扱い酷くない！？』




女を殺さない、喰わない。
それを知る私だからできるこの戦法。

あ、ちなみに私の鬼の推しはこの人です。
黒死牟もいいけどさ、最推し殺したし。




『改めましてこんばんは、狛治さん』

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