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お館様がむいくんに向き直った。
むいくんの背筋が伸び、声が響く。
「…僕は、お館様のご意志に従います」
「ありがとう、無一郎。
行ってくれるかい?杏寿郎と共に」
「御意」
むいくんが軽く頭を下げる。
空気が重くなるのが分かった。
私が一方的に押しつけたのに、
むいくんは既に準備体制に入る。
私に、鬼の情報を聞いてきてくれた。
『十二鬼月が2体出現しますが、下弦の1体はそれほど心配しなくて大丈夫です。問題はその後に出る、上弦ノ参です』
「…僕はそいつから皆を守ればいいの?」
『いえ、むしろ派手には戦わないで。
私が気を引くから適当に止めて下さい』
「君に倒せるの?」
『…今は誰も奴を倒せません。
みんなの命を繋ぐことが第一なんです』
「それが許されるとでも思ってるの?」
むいくんの目が一気に冷たくなる。
初対面の時と似た、光のない瞳。
信じられない。
とでも言いたげなそれは、大きく見開かれた後鋭く爛々としたものに変わった。
『お館様に許可を頂いていますから』
「……今のは、本当ですか」
お館様が悲しそうに微笑んだ。
ゆっくりと目を伏せ、静かに頷く。
「ああ。分かってくれるかな、無一郎」
「分かりません」
お館様の声を遮るように声が被さる。
相当怒っているんだろう。
顔の血管が薄く浮き出していた。
「鬼を滅する鬼殺隊ではないんですか?
上弦ともなれば人的被害も甚大、一刻も早く倒さねば何百人もの命が奪われる」
無感情で起伏のない声が怒気を纏い、
話す速度も格段に上がる。
ふと、私に顔が向けられた。
「君、鬼殺隊員なんだよね」
『はい』
「隊士としての自覚はないの?」
「無一郎、その子は転生者なんだ。鬼殺隊の未来を変えようとしてくれているんだよ」
「だったら何なんですか」
ここまでお館様に楯突く柱は、
若かりし不死川さん以外見た事がない。
正座していたむいくんは、いつの間にか立ち上がって真っ直ぐ私達を睨んでいた。
「転生者だから?異世界者だから何?
それどうこうより先に隊員としての自覚を持ちなよ、何のために鬼殺隊があるの?」
『……鬼を倒して人を守る為、です』
「分かってるんじゃん。
ならまずはそれを全うしたらどうなの」
正論すぎて何も言えない。
怒られるのなんて当たり前だ。
この人達は、隊士の皆は。
いつでも死ぬ覚悟が既にある。
私がしてるのは、それを踏み潰す事だから。
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さつむいこん(プロフ) - 楪日織さん» もう26位まで落ちてるわ…、見たかったな。忙しいのにわざわざ報告ありがとう〜! (2021年7月1日 21時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - 鬼滅タグランキング今1位だよすごい……!おめでとうさつむいこん!! (2021年7月1日 20時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ハイキュー!!さん» 私にとってはハイキュー!!さんが優しすぎて尊いです。ありがとうございます! (2021年6月15日 22時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー!! - 尊さの塊ですね! (2021年6月15日 19時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki(プロフ) - さつむいこんさん» こちらこそ!これからも頑張ってください!応援してます! (2021年5月28日 16時) (レス) id: d652f69505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年2月7日 8時