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6話 ページ8

「環………?」
『まゆみ。』

罵倒の空き教室に、まゆみが入ってきた。
そうだ。
まゆみは運動部で外にいたはず。もしかしたら桜井から事情を聞いたのかも。

「環………あんた………結愛を落としたの?」
『………ううん。落としてない。』

まゆみは近付く。
私に、一歩、二歩と距離を縮めていく。

「行くよ!」
『え?』

突然、まゆみは私の手をガッ、とでも効果音がつきそうな勢いで掴み、うずくまっていた私を無理矢理立たせ、教室を出て行く。

ざわめきなど、まるで聞こえないとでも言うように。

「結愛も許してくれるよ。」
『は?』

まゆみは呟く。

「環なら事情があったんだよね?話せば許してくれるよ。謝ろ?結愛、保健室にいるから。」

目の前が真っ赤に染まった。
やってねぇよ。何言っちゃってんの。

私はその言葉を聞くと、まゆみの手を振りほどいた。
『無理。何もやってないのに謝れないわ。』
「は?」

すると、結愛も怒ったような声を出す。

「何言ってんの。自分のやったことは」
『無理。やってない。信じてよ。』

すると、まゆみの目の色が変わった。
血色が良くなり、顔が紅く染まっていく。

「やった癖に!何で謝れないの!もう良い!お前に期待した私が悪かった!もう一生口聞くな!」
『へぇ…。裏切るのね。』

怒鳴られて裏切られても、不思議とそんなにダメージはなかった。

堕ちる人間が増えただけだ。
こいつの弱みならもう、知っている。

「お前なんて!人間じゃねぇよ!」

まゆみは暴言を吐いた後、保健室にかけだしていった。

「闇斎さん!」
『稲野先生。』

後ろから稲野に呼ばれ、私は振り返る。
稲野は顔を真っ青にして、私を見ていた。

怒りか。失望か。恐怖か。

それは、きっと誰にも分からない。

「貴方、落としたの?」
『…………。いいえ。なんなら証拠、ありますよ。』

私はスマホの録画を一旦停止して、稲野に聞かせてやる。

稲野は信じがたそうな顔をしていた。

「じゃぁ……。結愛さんが……。」
『………私を呼んだのは桜井さん何で。私はシロですよ。』

廊下の真ん中で、稲野は失望したような顔つきになる。
嗚呼、面白い。

『……貴方は絶対にこの事を生徒に言わないようにお願いします。』
「疑ってごめんなさい……。なんで?それだと」
『もし言ったら。』

私は稲野に近付き、目線がバッチリと合った。
そして目が見開かれた顔にそっと呟く。

後悔するのはアンタだから(殺してやる)。』

悪魔はそっと、美しく妖しく笑った。

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マナ - 本作の主人公が悪女主なのですか?悪女が悪女主なのですか? (2022年5月21日 17時) (レス) id: 3a1f179aac (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 主人公の親友は主人公の味方にできますでしょうか? (2022年5月18日 23時) (レス) @page4 id: 3a1f179aac (このIDを非表示/違反報告)
綾部伊沙(プロフ) - マナさん» アッ、良かったです……! じゃぁ是非こっちを読んでやって下さい……! (2022年5月18日 6時) (レス) @page3 id: b1825981c0 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - もうひとつの名前変更なしより名前固定の方が読みやすい… (2022年5月17日 22時) (レス) id: 3a1f179aac (このIDを非表示/違反報告)
マナ - こっちの作品の方が読みやすい… (2022年5月17日 22時) (レス) id: 3a1f179aac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綾部伊沙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e8e9c819a37/  
作成日時:2022年5月17日 20時

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