【弐頁】小さな客人達 ページ2
〇
視点無し
だが、悲劇もあれば喜劇もある。
『キュイ!(うまし!)』
そこの池は魚が美味かった。
何の混じり気もなく、シンプルに。海育ちのせいか、湖の魚の味が新鮮で堪らない。件の脱走劇のせいで手の爪がボロボロに剥がれ到底鎖を解ける状況では無いが、それにしたって魚が美味い。
瑞輝は意外と単純であった。
だって美味しいから仕方ないじゃないか。
だって美味しいから(ry
そんなこんなで、帰りたい気持ちは変わらないがかなり湖に定着して来た。そんな瑞輝の事を、誰かが聞き付けていたのだろうか。いつの日か、湖に小さな客人達が来るようになったのだ。
それは…鴉と、人間の子供。
何とも珍しい組み合わせである。
?「あ、今日もいた!おーい、人魚さーん!」
『キュル!』
肩に鴉を乗っけた齢9歳くらいの幼子が、嬉しそうに破顔して手を振って来る。その何とも不思議で微笑ましい光景に、子供好きな彼女は同じく嬉しそうに手を振った。いつだったか、湖に訪れるようになった小さな客人達。
木の上にまたもう一匹鴉がいるが、恥ずかしがり屋なのか中々降りてこない。
『キュ!』
?「おぉっスゲェ綺麗な石〜!」
『キュ!』
?「おぉ、魚……って食いさしはいらねぇわ」
『キュッ(えッ)』
この少年、何とも不思議な事に妖怪を恐れない。
大抵の人間は後退りするか、此方を害そうとする二択のみなのに。先の密猟者達は後者の様子だったが、今の時代こんな稀有な人間も居たのか。瑞輝は人間はあまり好きでは無いが、子供は好きである。
少年は月が顔を出した深夜にのみ訪れる。
数十年振りに見る友好的な人間との逢瀬を、瑞輝はすっかり楽しみにしていた。
未来への希望を疑う事無く湛えたような真黒の瞳を持ったその少年は────……陽太と、名に恥じない太陽のような優しい笑顔でそう名乗った。
『キュイ〜(また来ないかなぁ〜)』
瑞輝は、今日も待っている。
あの太陽のような少年を。
ただ、一つ────離れることなく木の上に居たもう一匹の鴉が、まるで偵察するような鋭い目線を送っていたが。
文字通り、瑞輝の運命を変えるその出会いまで後───·····。
(……そういえば、陽太は何であんなに傷だらけなのかなぁ?)
(山の中を通っただけじゃ、あんな傷にはならないのに…)
(まるで、意図的に暴力を加えられたみたいな……)
(……考え過ぎか)
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賽ノ目 アカリ(プロフ) - 楓さん» ありがとうございます!(o*。_。)o (2022年6月12日 20時) (レス) id: d0b76ddb34 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 頑張って下さいね!応援しますね! (2022年6月12日 20時) (レス) id: 12ed8e5001 (このIDを非表示/違反報告)
賽ノ目 アカリ(プロフ) - 楓さん» ごめんなさい、すぐ外しました!今後このような事が無いよう努めさせて頂きますm(_ _)m (2022年6月12日 20時) (レス) id: d0b76ddb34 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - オリジナル作品を消してくださいね!ルールですから。 (2022年6月12日 20時) (レス) @page5 id: 12ed8e5001 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:賽ノ目 アカリ | 作成日時:2022年6月12日 19時