【佰漆拾弐】歩行訓練の末。 ページ6
夢主side
……それからしばらくして、歩行訓練が開始された。
内容はシンプルで、人の手を頼りに歩くというもの。
物凄い量の血を吐き出しはしたものの、身体は普通に動かすことが出来る。
喜ばしいと言えば喜ばしいのだが、それが逆に不穏に感じてしまう私は疑り深いのだろうか。
まぁ、それは置いといて……歩行訓練は案外順調に進んで行った。
幸運なことに……失った視力を補うように、聴力が研ぎ澄まされて行ったのだ。
おかけで、集中さえしていれば人の足音からその人物を判断する事が出来る。
感覚も鋭くなり、足で踏んでいるところや手で触れているところから見て今いる場所が分かるようになっていた。
身体と言うのは、案外最適化に長けているようである。
まだ調整が必要ではあるが……毎日歩行訓練をやらなくても良いくらい、私の耳と感覚は真黒の世界に慣れて行った。
杏寿郎としのぶ、また協力してくれた他の柱達は若干寂しそうにしていたが……まぁ大丈夫だろう。
ただ、その分……普段聞こえない声まで無駄に拾ってしまうのだが。
世界は黒く、感覚と聴力だけが研ぎ澄まされて行く。
もう愛しい者達の顔を見る事は出来なくて、私だけがゆっくりと死んでいく。
だからなのだろうか。
普段気にも留めないような言葉さえ……過度に、反応してしまったのは。
□□□□
杏寿郎side
姉上の容態が安定したから程近い日。
見舞いの為、俺は蝶屋敷に訪れていた。
まぁしかし、かなりの頻度で来ている為胡蝶に「貴方蝶屋敷の住人ですか?」とからかわくらいだが……大切な家族が心配で何が悪いと言うのだろう。
そんな訳で、今日も今日とて見舞いだ。
今日は姉上が好きな金木犀の花を持ってきた。
あの人は、この花の香りが一等好きらしい。
元気な頃は、よく見に行っていた。
胡蝶に聞けば、彼女は今蝶屋敷の中を訓練がてら散策している最中らしい。
一人で歩けるくらい回復したのか、と喜ばしく思ってると…不意に、俺の耳が諍いの音を聞き取った。
「〜〜!!ーーッ」
「ーーww」
煉「む…?」
近付くにつれ、音が鮮明になっていく。
モブ隊士1「醜い容姿の視力無しの女なんて要らんだろw」
モブ隊士2「煉獄家の恥晒しめ!!」
一つ、青筋が立った。
煉「おい、貴様ら……」
出来るだけ気配を消し、話しかけようとした刹那
『じゃあもうどうすれば良いんだよ?!』
『視力も無い、もう刀も握れない!!』
『戦場にも立てない、何の役にも立たない!!』
『私の存在意義って、何?』
嗚呼……姉上は、もう限界だったのだ。
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花陰 桜(プロフ) - 紗那さん» 初めまして、コメントありがとうございます!私もそこは気合いを入れて書いたので嬉しいです!割と短めですが、モノローグとして現代編も入れる予定なのでお楽しみに!(ふんすっ) (2022年1月31日 19時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - 初めまして、とても素敵なstoryでお気に入りです!!一人ひとりの別れでは泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) このまま現代編に続いて欲しいです(^^) (2022年1月31日 0時) (レス) @page50 id: 651dd4d3c6 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - いちごマカロンさん» 嬉しいコメントありがとうございますm(*_ _)m (2022年1月23日 22時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
いちごマカロン - 面白すぎて一気読みしました!!やばい、小説読んでマジで泣いたのこの作品が初めて、、、新しいエピソードが毎回流される。 (2022年1月23日 8時) (レス) id: 8d57d47a4b (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - まっひーさん» ワーイ(*´ω`*) (2021年12月2日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花陰 桜 x他1人 | 作成日時:2021年9月18日 18時