【佰捌拾玖】水狐達との別れ【錆】 ページ29
夢主side
そして、錆兎だ。
……もっと寿命が長かったら、もしかしたら恋仲になっていたかもしれない人物。
錆「…。」
『!』
こちらが何か言う前にギュ、と手を握られた。
何も発さなくとも、険しい顔をしていることは分かった。
錆「…もう、お前の手を握れることは無いんだな」
いつも熱を持ってる私とは裏腹に、錆兎の固くて大きな掌はひんやりとしていて気持ちが良い。
『…錆兎、』
錆「……なぁ、杏華。
俺の独り言を、聞いてくれないか?」
『何だい?』
錆「──────好きだ」
ポゥ、と真黒の視界に炎が灯った気がした。
錆「少し前までは言えなかったそれを、今ここで言わせてくれ。
…本当は、もっと時間を掛けて言うつもりだったのだがな。
……杏華?」
「どうした?」と問う錆兎の優しい声が頭に入ってこない。
顔に熱が集まるのがありありと分かった。
やばい、なんか、照れる。
……こんな感情、初めてだ。
目が見えない筈なのに、錆兎の顔を直視出来ない。
…目を、逸らしたくなってしまう。
嗚呼、私は………。
やっぱり、好きだったんだ。
錆兎…君の事が。
──────命の使い所を見誤るな、君はまだ生きるべきだ
──────錆兎!
その感情に、蓋をしていた。
その感情に、名前を付けることを恐れていた。
その感情から、目を逸らしていた。
それが……どれだけ錆兎を苦しめていることすら、知らずに。
好きだ、錆兎が。
好きで好きで好きで、愛していたんだ。
けれど……今ここに、絶対に償い切れない借りが出来てしまった。
……ごめんね、時間切れだよ。
君の想いに答える為には、あまりにも時間が足りなすぎる。
失ってから気付く……とは、良く言ったものだねぇ。
錆「……杏華?」
ボロ、ボロと涙が零れる。
君の望み、私の望み、願いが涙と共に流れ落ちていく気がして。
けれど……応えられない訳じゃ、無い。
『……なら、迎えに来て』
錆「…え?」
『遠い未来の先……私を、迎えに来て』
『ずっと、待ってるから』
数秒か、数分か。
答えを待っていると……不意に、頭を撫でられた。
錆「───当たり前だ。
遥か先の未来まで、お前を追いかけてやる。
…逃げられると、思うなよ?」
『ふふ。
それは……嬉しいなぁ』
ねぇ、錆兎。
───大好きだよ。
【十数年越しの恋を、君に】
【あの日、水狐は恋をした】
【自分を救った、炎の虎に】
【その思いは、炎のように消えることはなかった】
【そして──その炎は、未来永劫消えることは無いだろう】
【遥か先の、未来まで】
ゆっっっくりですが更新再開しようと思います…。→←【佰捌拾捌】水狐達との別れ【義】
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花陰 桜(プロフ) - 紗那さん» 初めまして、コメントありがとうございます!私もそこは気合いを入れて書いたので嬉しいです!割と短めですが、モノローグとして現代編も入れる予定なのでお楽しみに!(ふんすっ) (2022年1月31日 19時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - 初めまして、とても素敵なstoryでお気に入りです!!一人ひとりの別れでは泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) このまま現代編に続いて欲しいです(^^) (2022年1月31日 0時) (レス) @page50 id: 651dd4d3c6 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - いちごマカロンさん» 嬉しいコメントありがとうございますm(*_ _)m (2022年1月23日 22時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
いちごマカロン - 面白すぎて一気読みしました!!やばい、小説読んでマジで泣いたのこの作品が初めて、、、新しいエピソードが毎回流される。 (2022年1月23日 8時) (レス) id: 8d57d47a4b (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - まっひーさん» ワーイ(*´ω`*) (2021年12月2日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花陰 桜 x他1人 | 作成日時:2021年9月18日 18時