【佰捌拾弐】大切な者達に、別れを告げよう。 ページ22
side無し
────それから程なくして、招集に答えた者達が煉獄家に集った。
所謂……最期の顔合わせである。
一人ずつ別れの言葉を言った後、杏華自身が最期に看取ってくれる者を選ぶのだ。
これは……紛れもなく、杏華自身の発案であった。
まだ動けなくなる前の、ある日の定期的に行われる柱合会議の何気ない休憩時間。
─────死ぬ時は、誰かに看取って貰いたいなぁ
そんな日常会話に過ぎない一欠片の言葉を、他の柱達は親身に受け止めそして計画を立てた。
…杏華の命の灯火が消える時は、必ず親しい者達で立ち会おう……と。
そしてそれは、無論彼女と親しかった炭治郎達も対象に入っていた。
それを提案された杏華は瞳をぱちぱちと瞬かせた後、こう宣った。
─────何だ、愛され過ぎて困っちゃうねぇ
華の咲くような、笑顔だった。
そしてそれが、巡り巡って今日に繋がっているのだ。
煉獄家の縁側。
杏寿郎の膝の上に乗せられた杏華を前に、いつか炭治郎と禰豆子を裁判にかけた時と少し似た構図で顔合わせに望んだ。
それほどまでに、杏華は愛されていたのだ。
この腐った世界で、まるでプリンセスのように。
そうでなければ、彼女の為にこんな大掛かりな計画を惜しげも無く実行したりしない。
個性的な面々が、全てたった一人の女性の為に動いているのだ。
こんな稀有な事、今までにあったか?否、無いだろう。
兎にも角にも、彼女の死を悼む者達が煉獄家に集結した。
『……きっと、これが君達と顔を合わす最期の機会になる』
『平気そうに見えるかもしれないが、もう身体が限界を迎えている』
『出来るだけ耐えるけど……それでも、終わる前に息絶えてしまうかもしれない。
そうだったら……ごめん』
し「…構いませんよ」
不意に、しのぶが口を開いた。
『…え?』
し「最期の言葉を言おうが言うまいが、私達は皆大切な貴方の為に見届けに来たんです。
そんなの、些細な問題です。
それより……私達の知らないところで人知れず貴方が死んでしまう方が、よっぽど嫌なのです」
『……!』
一見真っ直ぐに聞こえるその言葉も……裏を返すならば、「独りで死ぬのは許せない」
全ては、大切な彼女の為。
愛している、彼女の為だ。
だが……杏華自身も、とっくに狂っていたらしい。
見方によっては狂気的に見える笑顔を浮かべながら一言、
『……そんなの当たり前じゃないか』
だって、
この身体と心は、とっくに君達の物なのだから。
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花陰 桜(プロフ) - 紗那さん» 初めまして、コメントありがとうございます!私もそこは気合いを入れて書いたので嬉しいです!割と短めですが、モノローグとして現代編も入れる予定なのでお楽しみに!(ふんすっ) (2022年1月31日 19時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - 初めまして、とても素敵なstoryでお気に入りです!!一人ひとりの別れでは泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) このまま現代編に続いて欲しいです(^^) (2022年1月31日 0時) (レス) @page50 id: 651dd4d3c6 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - いちごマカロンさん» 嬉しいコメントありがとうございますm(*_ _)m (2022年1月23日 22時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
いちごマカロン - 面白すぎて一気読みしました!!やばい、小説読んでマジで泣いたのこの作品が初めて、、、新しいエピソードが毎回流される。 (2022年1月23日 8時) (レス) id: 8d57d47a4b (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - まっひーさん» ワーイ(*´ω`*) (2021年12月2日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花陰 桜 x他1人 | 作成日時:2021年9月18日 18時