【佰捌拾壱】かつての思い出に、思いを馳せる。 ページ20
side無し
と言ったが、主治医であるしのぶはかなり渋い表情を見せた。
当たり前だろう、幾ら親友の望みとはいえ最期まで親友には長生きして欲しいからだ。
だが……杏華の真剣さに根負けしたのだろう。
常に傍に人がいることを前提に、最期の外出許可が出た。
そして……「…最期の時は、私も同行させて下さい」という条件を添えて。
もう自らの足で歩くことが出来ない杏華は、今は杏寿郎にお姫様抱っこされながら実家への帰路についている。
これが最期の衣服になろう、文字通りの死装束に身を包みながら。
『…杏寿郎』
煉「はい?」
『あそこの横丁には、大昔母上の為に行ったねぇ。
母の日の贈り物の為に……』
煉「あぁ……懐かしい思い出です。
…母上は、笑顔で貴方を迎えてくれるでしょうか?」
『うん……きっと、迎えてくれるよ。
地獄まで連れていく気は無いけど…あの人と一緒に極楽浄土に渡るならば、きっとそれも……悪くは無いと思うんだ』
煉「…きっと、そうですよ」
『そういえば、私が最終選別に行く時はかなり渋られたねぇ。
無事帰った後でも安心したのかギャン泣きで……』
煉「なっ……なんでそんな事まで覚えてるんです?!」
『ふふ、この姉の記憶力を舐めて貰っちゃあ困るよ』
煉「グッ……」
気の所為では片付けられない程顔を赤くしている杏寿郎に、杏華は柔らかく口角を上げた。
目は見えなくとも、声色と身体の揺れで照れていると容易に判断できる。
今も昔も……相変わらず姉の褒め言葉には弱いのだ。
恥ずかしそうにそっぽを向いているらしい弟が杏華にとっては何だか酷くいじらしくて、思わずピーンッと額を弾いてしまった。
煉「ぁたっ?!」
『ふふ、私の前で可愛い顔をした罰だよ』
煉「んな理不尽な……」
『控えめに言って可愛過ぎる君が悪い(真顔)』
煉「えぇ……」
『まぁ、可愛いのは千寿郎もおんなじだけどねぇ。
褒める度にぽぽっと顔を赤くさせて可愛いんだあれが。
……そういえばあの子は元気かい?見舞いには来てくれていたが、いつも暗い顔をしていたから気になってしまってね』
煉「えぇ、最近は「煉獄家の歴史を後世に伝える!」と元気に本を読みふけって居ますよ。
千寿郎なりに、色々考えているところもあるらしいです」
『おぉ、そりゃ良かった。
……と、噂をすれば』
ヒラリと、手を振るう。
それは、任務帰りのなんて事ない挨拶と同じ物で。
あくまで日常のように、目の前にいるであろう家族達に微笑みかけた。
ふ、と口角を上げる。
『……ただいま、二人共』
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花陰 桜(プロフ) - 紗那さん» 初めまして、コメントありがとうございます!私もそこは気合いを入れて書いたので嬉しいです!割と短めですが、モノローグとして現代編も入れる予定なのでお楽しみに!(ふんすっ) (2022年1月31日 19時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - 初めまして、とても素敵なstoryでお気に入りです!!一人ひとりの別れでは泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) このまま現代編に続いて欲しいです(^^) (2022年1月31日 0時) (レス) @page50 id: 651dd4d3c6 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - いちごマカロンさん» 嬉しいコメントありがとうございますm(*_ _)m (2022年1月23日 22時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
いちごマカロン - 面白すぎて一気読みしました!!やばい、小説読んでマジで泣いたのこの作品が初めて、、、新しいエピソードが毎回流される。 (2022年1月23日 8時) (レス) id: 8d57d47a4b (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - まっひーさん» ワーイ(*´ω`*) (2021年12月2日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花陰 桜 x他1人 | 作成日時:2021年9月18日 18時