【佰漆拾玖】帰ろう、家に。 ページ19
※一日更新しなかった身分で申し訳ありませんが短め注意です！
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side無し
人生とは、長いようで一瞬だ。
もがいているうちに、道は遠く遠くへと行ってしまう。
そして……それは、儚き人の命でも同じ事。
元炎柱の煉獄杏華は……その役目を果たしたのだろう。
果たした上で、こうして今穏やかに眠ろうとしている。
いずれにせよ、いずれ見下ろすこととなる下界に未練でもあったのだろうか。
白のベッドに埋まりながら……確かに、その光を失った瞳を開いた。
『───、…ぁ』
煉｢！姉上！！｣
丸椅子に座り項垂れていた弟……煉獄杏寿郎は、その僅かな変化を見逃さなかった。
光を映さぬ視界にはもう不要だと、最近目を開きすらしなかったのに。
ガタ、と丸椅子を揺らしながら杏華に詰め寄る。
だが、明らかに身体が弱っているのだろう。
言葉すら発せず、ただ掠れた声を発すだけ。
その様子を見て、杏寿郎は瞬時に水の入ったコップを手に取った。
そして慣れた手付きで背中に手を添え、窒息しない角度で水を飲ませる。
『けふ、がふ…、ッ』
煉｢姉上…｣
もう時間が無い。
医療知識が無い杏寿郎にも簡単に分かるほど、杏華は弱っていた。
水を一杯飲み、軽く咳き込むだけの動作に……明らかに、紅い色が混じっているのだから。
もう、目線も虚ろだ。
失明していたとはいえ、元々気配に鋭かった為対話する時は確かに相手の方を向いてくれていたのに。
『…………ろぅ』
煉｢……え、？｣
微かに、唇が動いた。
その僅かな音を聞き逃さんと、片耳を近付ける。
彼はてっきり、自分の名前を呼ぼうとしているのだと思っていたのだが……。
『帰ろう』
『帰ろうよ、杏寿郎』
『私達の、家に』
『一緒に、帰ろう』
『皆がいる、あの家に』
──────おかえりなさい、杏華
杏華──────
帰りたい、帰りたい。
自分達の、家に。
戦場では無く、あの……煉獄家に。
ただ、帰りたいだけなのだ。
どれだけ血を吐こうとも、どれだけ苦しい思いをしようとも。
どれほど……早く楽になりたいと思ったとしても。
それは、彼女の確かな福音であった。
もう命の灯火が消えかけた武士の、囁かな望み。
そして……杏寿郎は、その願いを跳ね返すほど非情では無かった。
ふ、と口元が確かに綻んだ。
煉｢えぇ……帰りましょう、姉上｣
煉｢俺達の、あの家に｣
【佰捌拾壱】かつての思い出に、思いを馳せる。→←【佰漆拾捌】焼け野原に、雨が降る。
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花陰 桜(プロフ) - 紗那さん» 初めまして、コメントありがとうございます！私もそこは気合いを入れて書いたので嬉しいです！割と短めですが、モノローグとして現代編も入れる予定なのでお楽しみに！(ふんすっ) (2022年1月31日 19時) (
レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - 初めまして、とても素敵なstoryでお気に入りです！！一人ひとりの別れでは泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥｀) このまま現代編に続いて欲しいです(^^) (2022年1月31日 0時) (レス) @page50 id: 651dd4d3c6 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - いちごマカロンさん» 嬉しいコメントありがとうございますm(*_ _)m (2022年1月23日 22時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
いちごマカロン - 面白すぎて一気読みしました！！やばい、小説読んでマジで泣いたのこの作品が初めて、、、新しいエピソードが毎回流される。 (2022年1月23日 8時) (レス) id: 8d57d47a4b (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - まっひーさん» ﾜｰｲ(*´ω｀*) (2021年12月2日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花陰 桜 x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 18時
