【鬼滅の刃】ねぇ、守れたよ【肆】

【佰拾伍】行方不明。 ページ25

夢主side

『……失踪？姫ばし…あいつが？』

降って湧いたそのキーワードに、思わず紅茶を啜りながら眉根を寄せた。
今日は月一の定期検診の日。
特に異常は見当たらなかったのでしのぶと一緒に異国の紅茶を嗜んでいたが、どうやらあまりいい話題では無さそうだ。

少し不快の感情を露わにする私とは裏腹に、しのぶはさも冷静に言葉を紡いだ。

し｢えぇ。
最後の目撃情報は藤の家。
家の人が深夜飛び出していく彼女を見たのがそれっきりらしいですが…｣

『…鴉はいなかったのかい？』

し｢えぇ、それが……邪魔に思われたのか、既に殺されていたようで｣

『…なるほどねぇ』

元々、何か悪事を働く時連絡用の鴉が邪魔になって撲殺するケースは幾つか存在する。
しかし、任務終わりには必ず鴉が本部に戻って任務内容云々を報告をする筈。
だから、任務終わりなのに戻らないのは誰かが気付く筈なのだ。

ので、すぐに見つかると思っていたが……、

し｢逃げ足だけは無駄に早いようで、今も見つかっていないようです｣

と、残念そうに首を振られてしまった。

『腐っても鬼殺隊士、か……』

どうやら、笑える程に実力が無くても足の速さだけは一丁前にあったらしい。
それで、ほぼほぼ逃げに徹して来たのだと。
守るべき一般人がいる場合は例外だが、元より自分の命の危機を感じた時は敵前逃亡も許されている。

だけどまぁ、あいつの場合は一般人がいようがいまいが逃げ続けてきたから失脚の処罰も納得だけどさ……。

昔それを問い詰めたら、｢だって怖かったんだもん！！自分の命が危険なのに逃げて何が悪いの？！ﾑｷｰ!!｣といっそ清々しい逆ギレをかまされたことがある。

敵前逃亡は、別に特殊な事例以外特に責めはしないが……なら何故お前は鬼殺隊に入ったのかとツッコミたくなる。

し｢…特に調査はしないのですか？｣

『いや、良い。
私にはもう関係の無いことさ』

し｢あらあら、今まであんなに揉めていたのに…どういう風の吹き回しですか？｣

『今のあいつは癸隊士。
今まで散々使って好き放題していた柱の権限だって使えないも同然だし、それならば行動の幅も狭まる。
寧ろあいつ如きが今の私に攻撃出来るかってのがもう疑問だよ』

ハンッと鼻を鳴らせば、割とそういう話に鋭いしのぶが面白そうに笑みを深めた。

し｢貴方…割とドライなんですねぇ｣

『別に。
もう気にしてないし、眼中にも入ってないさ』




今思えば、完全なるフラグであった。

【佰拾陸】真夜中、迫る刃。※短め注意→←【佰拾肆】失踪。

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