【鬼滅の刃】ねぇ、守れたよ【肆】

【佰拾弐】思ひ出の残滓。 ページ12

夢主side

うーん、私の口では記憶が曖昧で語りにくいし……。

あぁ、そうだ……"これ"を使おう。
炎の色に少し白が混じっていてな、綺麗だろう？
私のお気に入りなんだ。
私以外"人がいない"から、これをいつも綺麗に磨くくらいしか使い道が無くてな…。

……ん？とても綺麗？

…ありがとう、そう言われて本望だよ。

お、そういえば君は知ってるかい？
DEAT〇NOTEっていう漫画があってな、そこで死神達が人間界を覗く場面があるんだが…それにちょっとだけ似てると思わないかい？

はは、まぁ世間話はこれくらいにしておこう。

君も、いつまで此処に居れるか分からないんだ。

これに近付いて、中身を覗いて見ておくれ。
別に悪いもんじゃ無いさ、ただの××なだけだ。
……そう、良い子だ。

ほら、意識を集中しろ。

秘められた記憶を、隠された過去を。




『集中』

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【閑話休題】

side無し

大正から百年も後の未来、令和。

文明が栄え続けているこの時代に、ある一人の幼子がいた。
彼女の名は、煉獄……では無く、雨宮 百合。
大正の煉獄杏華の正式な前世の姿だ。

といっても、その姿は似ても似つかない。

当たり前だろう、大正から令和ならともかく令和から大正へと転生したのだ。

少女には、弟がいた。

杏汰という名の、弟が。

杏汰は、少し性格や雰囲気が杏寿郎に似ていた。

百合の家族は、母、父、弟という三人構成であった。
裕福ではないが、貧乏でもない。
そんな普通の、平凡な家庭だった。

けれど、確かに幸せだったのだ。



……あの時、までは。




杏汰と母、二人で買い物に出かけている時だった。


｢おい！！危ねぇぞ！！｣



突然、誰かの怒号が聞こえた。
次いで、強くドンッと背中を押される感覚。
思わずよろめき、地面に伏せる。
背中に感じた感覚は、二つあった。


ぐちゃりと、何かが潰れる音が響いた。



『……母さん？杏汰？』




その日、突然姿を消した二人は終ぞ家に帰ることは無かった。

｢二人共交通事故で…｣

｢可哀想にねぇ……まだ若いのに…｣





百合は、まだ幼かった。

『……どうして二人は帰ってこないの？』

『私良い子だよ？』

『杏汰が好きなさつまいもの味噌汁食べちゃうよ？』


『私が悪い子だから、置いて行ったの？』




まだ幼い彼女に、それは酷く酷な現実であった。
だから、耳を塞いだ。
もう何も、聞こえないように。

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