【佰拾漆】偽物のプリンセス。 ページ27
夢主side
────夢を、見た。
青々とした草原の向こう、ポツリと立った一本の木。
その横に立つ、既視感がある女性と横にふわふわ吹く紅白の球体。
『…?』
きょとり、と首を傾げる。
はて、何だろう……なんだか既視感が…私、前ここに来たような気がする…。
……私って、誰?
ここに来る前、何を…していたんだっけ?
思案しているうちに、女性が何か叫んでいるのに気が付いた。
けれど、何故か音が聞こえる範囲の筈なのに声が全く聞こえない。
まるで、何かに阻害されているように。
と、その瞬間──────少し遠くにいた筈の女性が、ガバリと身を乗り上げ私の耳に手を添えてきた。
『……ッ?!』
凛とした涼やかな眼差しに、私はどこか見覚えがある気がして。
『母、上……?』
瑠「早く起きなさい杏華!!
貴方が─────死んでしまいますよ!!!!」
今までに見た事がない程、必死の形相だった。
その瞬間、彼女では無い誰かに襟首を引っ張られ─────私の意識は、急激に上昇して行った。
瑠「全く…世話が焼ける娘ですね。
まだこちら側に来てはいけませんよ」
意識が引っ張られる直前、優しい笑顔で手を振るあの人の姿が見えた気がした。
・
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グンッと、意識が引っ張られる。
まるで、海の底から急激に上昇していくように。
バチバチと、光が弾ける。
その正体を探ろうと───思わず手を伸ばし───、
『──────ぅあ!!』
その瞬間感じたのは、喉が引き攣れるような強烈な不快感。
汗が濁流のように流れ、酸素を取り損ねた喉からは空気が漏れる音がした。
それ以上に、空気を掠める鈍い音の発生源に─────私は迷わず、右手を突き出した。
ずりゅ、と肉を抉る鈍い音。
発生源……小刀が貫いたのは、私の首元でも心臓でも無く──────今突き出した右手の、丁度ど真ん中だ。
つまり、振り下ろされた小刀を右手に貫通させる事で受け止めたってことだ。
『、ギィ……!!』
刺された箇所から、焼けるような痛みが漏れ出る。
当たり前だ、まだ火傷が治り切って無いんだし。
めちゃくちゃいてぇぞクソが…!!()
けれど、まぁ……それはまた後でいいか。
小刀と柄の接続面に血を流す右手を押し付け万が一にでも抜かれないようにし、月光を浴びて顔を晒すその人影に凄んだ。
『腹に跨り、小刀を突き付ける…か。
全く、何処のプリンセス気取りなのか……。
…けど、まぁ。
残念だったなァ
お前はプリンセスにはなれない』
見開かれた瞳に、顔を限界まで近付けた。
【佰拾捌】相反する悪意。→←【佰拾陸】真夜中、迫る刃。※短め注意
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茨の谷の第二王子 - すみませんw私あんまり優しくないのでのところでどこぞの糞カラs((ン"ン"学園長を連想してしまったw誰か僕を○してくれw (2022年2月18日 15時) (レス) @page28 id: 436e3086c5 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - 澪凪さん» ありがとうございます(*´ω`*)無事に治って良かったです! (2021年8月13日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» 私も大好きです…!皆で酒盛りして欲しかった……(願望) (2021年8月13日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 風邪治ってよかったです!!お体には気を付けてくださいね!<(_ _)> (2021年8月13日 16時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - 家族思いで本当は優しい渋くてカッコいい槇寿郎さん素敵! (2021年8月13日 16時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花陰 桜 | 作成日時:2021年7月24日 18時