【佰拾伍】幸せな悪夢。 ページ15
しのぶside
と、言っても……杏華さんの為とはいえ私は医者。
ずっとかかりきりで彼女の家に常駐する訳にもいかない……ので、「定期的な健康診断」と評して煉獄さん自ら連れてきて貰った。
キョトンとした顔で訪れた彼女は、こちらを見るなり嬉しそうに手を振って来た。
『お、しのぶ!久しぶり…でも無いかな?』
顔色と言語能力に問題は無し、少し動きが鈍っているが許容範囲……だが。
その細い頸には、紛れもなく手の形をした赤紫の痣がグルリと一周するように刻み込まれていた。
……なるほど、記憶には残ってない感じか。
寧ろその方が好都合だろう、下手に明かして混乱を招かれてもこちらが困る。
し「いらっしゃい、杏華さん。
今日は定期的な健康診断です。
一応聞いておきますが……身体に異常は?」
ぱちぱち、と目を瞬かせた彼女は暫しの逡巡の後考え込むように斜め上を微かに見上げた。
『ん〜、そうだなぁ……呼吸が碌に使えない事以外は特に異常は無いけど…強いて言うなら、喉がやけに詰まる、くらい?』
し「……なるほど、分かりました」
喉以外に不調は無い……逆に言えば、喉に不調が出るほど強く締め上げている…ということか。
一体どのような力で締めているのかはまだ未知数だが、それもこれから分かるだろう。
僅かに混乱している心を隠すように、いつもの優しげな笑顔を浮かべた。
し「とりあえず!検査の為数日は蝶屋敷に入院してくださいな。
一先ずは落ち着く為に薬で眠ってください。
その後に、検査を始めますよ」
『あぁ、分かった。
……しのぶ』
し「はい、何でしょう?」
『…出来れば、苦くない薬の方が助かるよ……ウン』
………………。
し「それなら血管に直接ぶち込んでみましょうか?楽になりますよ」
意訳:甘ったれてんじゃねぇぞ
『えぇっ?!酷い!』
【閑話休題】
さて、杏華さんが薬で眠ってから数十分。
……それは、存外早く現れた。
『────ぅ゙あっ!』
煉・し「「!!」」
彼女が寝ている部屋から聞こえてきた明らかな呻き声に、揃ってバッと顔を上げる。
素早く、それでいて静かに隣の部屋に飛び込み……そして、目を見開いた。
『カ、ハ……ッ。
ギュウ……』
足が、陸に上げられた魚のように痙攣している。
口からはぶくぶくと泡が垂れ、口の端を伝っていく。
そして─────明らかに傷付ける意志を持った、頸に食い込んだ少し日に焼けた手。
し「──────、」
私はそこで一瞬─────彼女に跨って頸を絞める【黒髪黒目の幼い少女】を幻視した。
259人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茨の谷の第二王子 - すみませんw私あんまり優しくないのでのところでどこぞの糞カラs((ン"ン"学園長を連想してしまったw誰か僕を○してくれw (2022年2月18日 15時) (レス) @page28 id: 436e3086c5 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - 澪凪さん» ありがとうございます(*´ω`*)無事に治って良かったです! (2021年8月13日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» 私も大好きです…!皆で酒盛りして欲しかった……(願望) (2021年8月13日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 風邪治ってよかったです!!お体には気を付けてくださいね!<(_ _)> (2021年8月13日 16時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - 家族思いで本当は優しい渋くてカッコいい槇寿郎さん素敵! (2021年8月13日 16時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花陰 桜 | 作成日時:2021年7月24日 18時