見てくれる人【5】 ページ39
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「ありがとうございましたー」
そう衣装係さんたちに言って部屋を出ると千晃が立っていた。
「千晃も終わってたんだね」
「うん、けっこう前にね」
「あ、私遅かったかな？」
「大丈夫だよ。リーダー、真司郎、宇野ちゃん……えっと、あと秀太は終わってるけど。にっしーとだっちゃんはわかんない」
思い出しながら教えてくれた千晃にお礼を言った。
2人で話しながら楽屋に戻ろうとすると、
「他の人には言わないの？」
女の子の声がひとつの会議室から聞こえてきた。
私と千晃が一緒にいるんだからそこにいるのは間違いなく宇野ちゃん。
彼女は誰と話しているんだろうか。
千晃と顔を合わせてから少し空いていたドアから会議室の中を覗いた。
「どうだろ、わかんない」
よく響く彼の声。
………にっしーだ。
言わない？
なんのこと？
「タイミングとかいろいろあるだろうし」
「そ、そうだよね」
戸惑ったような宇野ちゃんの声。
表情は見えないから何を思ってそう言ってるのかわからない。
第一、なんの話かもわかってないけど。
「ねえ、キスしていい？」
「え、キス？」
隣の千晃が驚いている。
私は2人の声を聞きながら静かに胸を痛めた。
そうだ。そうだった。
フラッシュバックしたあの日の光景。
『宇野ちゃん。俺と付き合って』
そうだよ。2人は付き合ってるんじゃん。
キスって言葉に反応した私はにっしーとはただのメンバーで。
ただ私が一方的に想ってるだけ。
それも、気づいたのが昨日で。
宇野ちゃんはもっと前から好きだったみたいだし。
はは、笑いさえ起こってくる。
何もかも遅かったんだな、私。
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作者名：ソルト
| 作成日時：2015年7月26日 22時
