本当のこと【4】 ページ25
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「お疲れー、あれ、西島は？」
日高くんがそう私に聞いてきた。
「え？にっしーなら……」
後ろにいると思ってたにっしーはそこにいなかった。
「どこに行ったんだろうな、あいつは」
笑いながら日高くんが言う。
気がつけば私はドアのほうへと歩き出していて。
「A？別に探さなくても……」
日高くんの声は聞こえてた。
だけど私はにっしーを探しに練習室を出てしまった。
なぜか、不安だった。
にっしーがどこにいるのか、気になってしまう。
さっきまで私もいた会議室。
そこににっしーはまだいた。
にっしーは一点をまっすぐに見ていて、それは驚いているようにも思えた。
ドアを少しだけ開けると、広くなった視界。
にっしーが見つめていたもの、それは……
「……宇野ちゃん？」
見えたのは宇野ちゃんの後ろ姿。
にっしー
そう呟いた宇野ちゃんはいつもとはなんだか様子が違う。
「レッスンは？」
心配そうに聞くにっしー。
「……えっと、言いたいことがあって、さ」
頑張って言葉を選んでいる宇野ちゃん。
盗み聞きはいけないことだなんてわかってる。
だけど聞きたいという本能が勝ってしまった私の心の中。
気になって仕方がなかった。
私は宇野ちゃんの後ろ姿と彼女を見つめるにっしーを見た。
「……悪いんだけどさ、あの日のことはなかったことにしてほしいの」
少し震えた宇野ちゃんの声。
あの日のこととはなんなのだろう。
「………迷惑かけて、ごめんね。私の軽はずみな行動のせいで、みんなに変な影響与えちゃうって………やっとわかったの」
ゆっくりと途切れ途切れにそう告げた宇野ちゃんはきっと泣いている。
「だから、これまでみたいに………またメンバーとして、元の関係のままで接してほしいな。
………自分勝手だってわかってる。ライブ前なのに色々ごめんなさい」
にっしーに頭を下げた宇野ちゃん。
にっしーは呆然としたまま宇野ちゃんを見つめていた。
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作者名：ソルト
| 作成日時：2015年7月26日 22時
