番外編 ページ43
(その後の2人)
『ちょっと重たいよー』
「良いじゃん別に」
今日は特に何も用事がない日曜日。
瑠姫も午前中で練習が終わったらしく、うちにやってきた。今から行くから、とだけ送られてきたLINEに突然だなあと思いながらも正直嬉しくてニヤけたのは言うまでもない。
そんな瑠姫はソファに座り、ソファを背もたれにしていたわたしをぎゅーっと上から抱きしめる。
肩にずしっと瑠姫の重さがかかってるから、重いと伝えたのにそんなの関係ないとでも言うかのような返事が返ってきた。
『なんか映画とか見る?』
「見ない」
『飲み物いる?』
「いらない」
さっきから全ての質問を否定で返してくる。
何か彼のお気に召すものがあるのではないかと探ってみるけどどれもダメそうだった。
「A」
『なに?』
「好きだよ」
ひゅっと喉がなった。
耳元でそんな甘い声でその言葉をかけるの本当にやめてほしい。嬉しいけど胸が痛いほどキュンとして寿命が縮みそうになる。
「Aは?」
『え、』
「俺のこと好き?」
『うん』
「うん、じゃないでしょ」
ほら言ってみな、って何故か甘い声で囁かれる。さてはわたしがそれに弱いって知っててやってるなこの人。
チラッと横を見ると楽しそうに口角上げている。何だか悔しくなってするりと瑠姫の腕から抜けて隣に座る。
『好きだよ、大好き』
わたしだってやられてばっかりではない。
彼の頬に短くキスをすると瑠姫は固まってしまった。効果あったのかな?と思い、呑気に彼の顔の前で手をふりふりしているとその手をガシッと掴まれた。
「何でそんな可愛いことするかな」
ドサっとソファに倒れ込む。瑠姫の綺麗な顔ごしに天井が見える。
「俺、容赦しないよ?全力で好きだって伝えに行くよって言ったよね」
付き合った後に言われた言葉。
その他にも一分一秒でも側に居たいって言われた。多分彼はわたしが想像するよりも重たい感情を持っているのだと思う。
でもそれがわたしにとっては心地良かった。もうあの時のようにはならないのだと安心させてくれるから。
『うん、良いよ』
「意味、絶対わかってないでしょ」
分かってるよと言おうと思った唇はそのまま瑠姫に奪われた。食べられるんじゃないかというキスの嵐に苦しくなりながらもこの幸せな時間がいつまでも続け、と願った。
fin.
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作者名:あい | 作成日時:2023年11月13日 20時