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一時間目の授業が始まったせいか空き教室の周りに誰も来る気配はなかった。近くにあった椅子に腰掛けると、机を挟んで瑠姫が椅子の背に肘を預ける格好で座った。
『初めてサボっちゃった』
「A」
『なに？』
「キス、していい？…てかしたい」
『えっ！？』
「…………なんで」
聞くのと同時に視線をわたしの唇に落として近づいてきた瑠姫を慌てて手のひらで止める。
瑠姫はむすっとした表情で拗ねているのがわかった。可愛いけど、ちゃんと確かめておきたい。
『瑠姫はいつから、わたしが好きなの？』
「物心ついた時からずっと。じゃなきゃあんなヒーローぶったことしないだろ」
嬉しくなって暖かい気持ちになったけどやっぱりしこりは全て取り除いた方がいい。そう思って言葉を続けた。
『じゃあ、なんで避けた、の？』
「…………言わなきゃ、ダメ？」
まるで子猫のようにキュルキュルとした目で訴えてくる。でも、もう分かってしまった。これは彼の作戦だ。
彼は自分が超絶イケメンであるという自覚がある。故にそれを使ってこようとしている。実際若干流されそうになってるけど。
『だめ。だって悲しかったんだよ、あの時』
「あー……分かったよ」
全部話すよ、と観念したかのように瑠姫は座り直して窓際の棚に背を預けた。
ーーーーー
俺の朝はAとの登校から始まる。
記憶も曖昧な頃からずっと一緒にいる幼馴染は何かと危なっかしくて目が離せなくて常に一緒にいた。
まあそんなのはこじつけで、俺は物心ついた頃からAが好きだった。だからいつもこうして"幼馴染"として隣をキープしていた。
『瑠姫！おはよー！』
「ここ、はねてる」
『え、どこ！？めっちゃ恥ずかしい』
何を今更言ってんの？毎朝寝癖ついてんぞ、と言うとAは怒った表情になり、ズンズンと先に歩いて行ってしまった。
「おい、待てって」
『いつも頑張って可愛くしてるのに』
「知ってる、可愛いじゃんそれ」
恐らく早起きして頑張ったのであろうヘアアレンジを褒めると急に茹蛸のように顔を赤くしていた。そういうところだよ、Aのかわいいところ。
正直な反応が可愛くて何かにつけて揶揄いたくなる。もちろん思ったことをそのまま言葉にしてるだけなんだけど。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
