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「俺じゃ、ダメ？」
『え？』
どういう意味か分からなくて混乱する。
まずこの体制にもドキドキしすぎて訳がわからなくなってくる。
「好きな人も、相談したい相手も、全部俺じゃダメなの？」
『何、言ってんの…それって…瑠姫が……』
「好きだよ、A」
もう一度ぎゅっと力を入れられて耳元で瑠姫の甘い声がした。全身が熱を帯びてしまう。
動揺で固まってしまって動きたくても動けない。
「俺から避けたのに何言ってんだって思うだろうし、Aが先輩のこと好きなのも知ってるけ…」
『瑠姫』
申し訳なさそうにする彼に言葉をかけようと思った瞬間、予鈴が鳴った。瑠姫は我に帰ったようにわたしの体を離して時計を見た。
「ごめん。でも今の、嘘じゃないから」
戻ろう、と踵を返そうとしている瑠姫の背中に抱きついた。どうしてもわたしの気持ちを聞いて欲しいし、まだ二人きりでいたかったから。
瑠姫からの言葉を聞いた時、美彩が好きなんじゃないの？とかなんで避けてたの？とか色々考えることがあった。
だけど、きっと目の前の彼の言葉は嘘じゃない。彼の表情からそれがはっきり分かるから少し涙が出そうだった。
『ねえ聞いて、瑠姫。……わたしも大好きだよ』
「え？だってA…」
『大好き。説明すると長くなっちゃうから今は、これだけ、伝えさせて』
「まじで？」
『うん』
「嘘じゃなくて？」
『うん』
耳には本鈴の音が聞こえているけど今は気にならない。
「…俺のこと、好き？」
『さっき、言ったよ』
「もう一回聞かせて」
くるりと瑠姫が振り返って顔を覗き込んでくる。おねだりするような甘い顔してる。
ずるい、ずるいよその顔。
『好きだよ』
そう伝えると同時に抱きしめられた。
ふわっと瑠姫の優しい香りがして落ち着く。ドキドキもしてるけど何より安心感で包まれた。
「俺も大好きだよ」
瑠姫の甘い甘い言葉が耳に残った。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
