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さっきまで笑っていた瑠姫の表情が色を失ってしまった。そしてどこか傷ついたような表情になっていた気がした。
『こ、こんにちは』
「………こんにちは」
蓮「やっほー。……二人は、もしかしてデート？」
「いや違うっすよ。海行ってきて、クラスメイトとさっき別れてきたんです」
まるでシシシと効果音がつきそうな笑いを浮かべてそう聞いていた先輩に対して即座に否定したのは瑠姫だった。
確かに今この瞬間のわたしたちはそんなハッピーなものとは言えない雰囲気だったけど、瑠姫に即答されたのが少し悲しかった。
蓮「海楽しそうやねー！」
拓「ちょっと蓮くんもう買い物終わった？はよ戻らな、怒られるで」
コンビニの外に立っていた男の子が川尻先輩に話しかけながら近付く。
この子見たことある。一年の川西くんだ。
確か美彩が今年の一年にとんでもない美形がいたって騒いでいたような気がする。
蓮「あ、そうやった」
拓「蓮くん！？あ、はもう絶対忘れてたやん！ほら急いで帰りましょ」
蓮「ごめんって。じゃあ二人ともまたね」
すんません、と言いながらぺこりと頭を下げた川西くんは川尻先輩をぐいぐい引っ張ってわたしたちがやってきた方向へ歩いて行った。川尻先輩ってしっかりしてるんだか、抜けてるんだか。
二人を見送って恐る恐る横を見ると瑠姫はじっとこちらを見ていた。
『あのー…』
「ねえ」
『…っは、はいっ！』
「Aはやっぱりあの人が好きなの？」
『川尻先輩のこと？先輩は「待って。やっぱ答えなくて良い」……え？』
答えようと思ったら急に制止された。
不思議に思って瑠姫の顔を見ると今までに見たことがないくらい悲しそうな顔をしていて、思わず手を伸ばした。
けれど、その手は瑠姫によって掴まれてゆっくり下ろされ、そのまま夏のじめっとした暑い空気にさらされた。
「帰ろ」
『うん』
何も言うな、と言わんばかりに瑠姫は歩き出し、そこからは無言のまま家まで辿り着いた。
じゃあねと別れの挨拶はあったものの心の中にはしこりが残ったままだった。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
