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「Aも俺のこと好きになっちゃうってこと？」
ようやく顔が見えたと思ったら真剣な顔でそう聞いてきた。
わたしが、瑠姫を好きになる？
いや、わたしの好きな人は川尻先輩のはずで、瑠姫とはせめて幼馴染として仲良くできたらいいなくらいに本気で思っていた。
…………でも今、分からなくなっている。
わたしが誰を好きなのか。気持ちは誰を追っているのか。
あの頃、無理矢理蓋をしたはずの気持ちが疼いているような、そんな感覚。
「冗談だよ。今の、忘れて」
わたしが相当難しい顔をしていたのか瑠姫は困ったように、悲しそうに笑ってそう言った。
伝えたいことはあるはずなのに上手く言葉に出せなかった。
「そろそろ出番だし、行こう」
『…………うん』
そのまま入場の時間になり、瑠姫に連れられてグラウンドのど真ん中へ。他のクラスの仮装を見ると多種多様でそれぞれ個性が出ていた。
うちのクラスは仮装テーマ自体は定番ではあるが、瑠姫のおかげでそれはそれは大きな黄色い歓声を浴びた。
「「「ぎゃーーーー！！！」」」
「王子先輩格好良すぎる…」
「隣の人羨ましい」
競技中も歓声はなりやまず、瑠姫は慣れた素振りで手を振りファンサービスしていた。まるでアイドルじゃん、と突っ込んだのは言うまでもない。
ついに渡されたバトンを受け取り、わたしたちのスタート。
練習通り1.2.1.2と息を合わせてペースを上げる。ドレスが走りにくくてもたつきそうになったけれど、瑠姫が空いている手で裾を綺麗に持ち上げてくれた。
アンカーだったわたしたちは一位でゴールテープを切った。
息を整えながら盛り上がる観衆を見ていたら突然体が浮いた。
気づけば瑠姫にお姫様抱っこをされていた。
グラウンドに響き渡る悲鳴のような黄色い歓声に少したじろぎそうになったけど、瑠姫が捕まってろと言わんばかりにぐっと抱き上げ直した。
その後二位のグループが横に並び、ゆっくりと地面に降ろされた。
「どう？俺のお姫様抱っこ」
『どうもなにもびっくりした…』
お姫様抱っこされたこと自体にもびっくりしたが、抱き上げられていた瑠姫の腕は細いけどしっかり筋肉がついていて正直そっちの方にびっくりさせられた。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
