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「おい」
『ん？』
振り返ると不機嫌そうな瑠姫がいた。
さっきまで楽しそうだったのにどうしたのだろうか。
「先輩、チーム違うだろ。応援してどうすんだよ」
『確かに。……でも先輩だけ応援するのは問題なくない？』
「問題大有り」
なんで、と聞こうと思ったけど顔を両手でふんわり包まれて動けなくなった。目が離せない。というか離させてくれない。
瑠姫の瞳はしっかりとわたしを捉えていた。
「Aは俺の応援だけして」
有無を言わせないその目線に頷くしかなかった。魔法にかけられたかのように動けなくて、少し苦しくなった。
瑠姫はわたしが頷いたのを確認して満足そうな表情を浮かべる。
あれ？今名前……と思ったのも束の間。
「じゃあ俺あっち行くわ」
また明日な、高城、とリレーチームに混ざって行った。その後ろ姿からは表情は読み取れなかった。
ただ、夕日のせいかもしれないけど、少しだけ彼の耳が赤くなっていたような気がした。
ーーーーーー
バタバタと過ごしていたらいつの間にかやってきた体育祭当日。
美「結構暑いね、今日。日焼け止め塗った？」
『あ、やばい！塗ってない！』
祥「Aちゃん、日焼け止め持ってないん？」
美彩と日陰に避難しているとひょこっと祥生が現れた。彼は中学の後輩で委員会やら行事やらで関わることが多くて仲良くなった。
祥「ほらこれ、塗っとき」
スッと差し出されたSPF50の日焼け止め。
さすが美容男子だなあ、と思いながら祥生を見ていたら横にもじもじと気まずそうにしている男の子がいた。
『祥生のお友達？』
祥「うん、そうやで。翔也っていうねん。最初は人見知りやからこんな感じやけどめっちゃおもろいねん」
翔「お、おはようございます。今日も太陽は明るいですね」
『…………あれ？もしかして翔也くんってダンス部？』
翔「あ、はい！そうです！」
『やっぱり！川尻先輩と踊ってるの見たことあるもん！』
ダンス部の練習をこっそり見学に行った時に彼を見かけたことを思い出した。
わたしみたいなダンスの知識がない人でも分かるくらい上手いと思ったし、何より踊っている最中に見せるミステリアスな雰囲気が印象的だった。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
