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「なんで、ここにいんの？」
『佐藤くんが、今ならここかもって教えてくれて』
「そっか」
『…っ、(キーンコーンカーンコーン)
言葉を発そうと思った瞬間に予鈴がなった。
白岩は予鈴にハッとしたのか目をぱっちりと開け、掴んでいたわたしの手をぱっと話すとごめん、と呟いて出て行こうとした。
このままではダメだと思った。
思わずその白くて華奢な腕を掴んで引き留めた。
「何？」
白岩は目を合わせてはくれず、掴まれた腕を見ていた。
『前みたいに、瑠姫って呼んでも、いい？』
自分から一歩踏み出してみよう、そう思って言葉を絞り出した。
反応が怖くて恐る恐る白岩の顔色を伺う。
「うん」
短い返事だったけど彼の表情を見て安堵した。
いつも河野くんの話を聞いている時に見せる柔らかい微笑みだった。
『瑠姫』
「うん」
『瑠姫』
「なんだよ」
中学の頃に戻れたような感覚になって、何度も呼ぶと瑠姫は呆れたように笑っていた。
そんな彼の笑顔に見惚れてしまう。
「ていうか遅れるし、急ぐぞ」
手を掴まれて走り出す。
足の速い瑠姫のペースに倒れるかと思ったけど、何とか本鈴と同時に教室までたどり着いた。
幸い先生はまだ来ていないようで助かった。
ドアの前で手は離れ、瑠姫は中へ入っていった。掴まれて暖かくなっていた腕には空気が当たって少し冷たくなった。
もっと教室が遠かったら良かったのに、そんなことを思ってしまった。
美「A？早くこっちおいでー。先生もう来るよ」
純「そうやで。高城さん、早よ座りや」
手招きしてくれる二人に危なかったー、と言いながら着席する。何となく後ろからの視線を感じて振り返る。
「前髪凄いことになってんぞ」
『瑠姫が全速力で走るからじゃん…』
「でも間に合ったからいいだろ？」
乱れた流れをさらっと直すように触れられた前髪に意識が全集中する。
俺のおかげ、と余裕そうに笑う瑠姫にドキドキしてしまう。
わたしがこんな気持ちになって良いのだろうか。
純「え！？待って今高城さ…「すまん遅れたわ。始めるぞー」
河野くんの口からわたしの名前が出ていたような気もするけど、先生がはいってきてそのまま授業が始まってしまって聞くことができなかった。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
