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美「みなまではわかんないけど、いかなきゃ絶対後悔するよ。A、逃げても変わらないよ」
美彩は説明せずともわたしの気持ちを汲み取ってくれたらしい。美彩の言葉に背中を押されて、わたしは教室を飛び出した。
『はあ、っは………っどこ？』
校内を走り回ったけど白岩の姿は見当たらなくて、辺りをキョロキョロと見渡す。すると誰かに声をかけられた。
景「A先輩？」
『佐藤くん！あの…し、白岩知らない？』
その声の主は後輩の佐藤くんだった。
白岩と仲の良い彼なら何か知っているかもと思い、息を整えながら白岩の居場所を聞いてみた。
景「るっくん？あー…今ならあそこ、かも」
そう言って佐藤くんが教えてくれた場所は旧校舎の教室だった。旧校舎は昼間はそんなに人が通る場所じゃないし、まさかと思ったけど佐藤くんを信じることにした。
『…ここ？』
佐藤くんに言われた旧校舎の化学準備室の前にやってきた。鍵はかかっていないようでゆっくりドアノブを回すとドアが開いた。
そろりそろりと中に入ると、奥のソファーで誰かが寝ているのが見えた。顔を腕で覆っているけどサラサラの金髪と白い肌で分かる。白岩だ。
『し、白岩…？』
…………。
寝ているのだろうか。返事はなかった。
ソファーの側にあった丸椅子に腰掛ける。
何となくサラサラの髪に触れたくなってふわりと撫でた。
今ここで彼が起きたらきっと手を払いのけられるんだろうなあ、と思うと少し胸が痛くなった。
『もう、戻れないのかな………』
思わず溢れた声にハッとして時計を見た。もうすぐ予鈴が鳴る。予鈴が鳴れば彼は起きてしまうだろう。
この名前のつけようがないふわふわとした時間ももう終わり。
そう思ってまたそろりそろりと教室を出ようと立ち上がったらガシッと腕を掴まれた。
「ん、…A？なに、してんの？」
『あ、し、ろいわ……』
彼は寝ぼけているのだろうか。急に呼ばれた名前に心拍数が上がるのと同時に何だか嬉しくて口元が緩む。
お願い、もう一回だけでいいから名前を呼んで。あの時、何度そう思ったことだろうか。
寝ぼけてるとは言え、まさか今突然呼ばれるなんて。
自分の名前を呼ばれているだけなのに、気持ちが追いつかない。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
