ブーゲンビリア【R.S】 (ページ16)

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彼の笑顔を見たせいで、そんな仕舞い込んだはずの思い出が走馬灯のように頭の中を巡っていた。

会場の盛り上がる声でハッとした。

美「ちょっとちょっと！河野くんも決めちゃったよ！」

ちょうど河野くんがゴールを決めたところだった。考え込んでしまっていたせいで肝心のボールが吸い込まれる瞬間は見ていなかったけど、河野くんがくしゃくしゃの笑顔で観客席を見ていた。

その後試合は2-0のまま動かず、うちの高校が勝利した。
相手校ももちろん強豪の名の通りシュートを何度も打って攻めてきていたが、そのボールはゴールネットを揺らすことは無かった。相手選手たちはみんな悔しそうな顔を浮かべていた。

『かっ、こよかった……』

美「ね！」

高揚感のある中でパチパチと選手たちに拍手を送っていたが、ふと白岩の姿が見えないことに気づいた。

『あれ？白岩居なくない？』

美「え、嘘？…本当だ。もう控え室戻ったのかな？」

グラウンドのベンチ方向を見るとチームメイトとハイタッチしたり、抱き合ったりしている河野くんが居たが、やはり白岩の姿はそこにはなかった。

瑠「高城」

突然かけられた声に肩を上げた。
何故か白岩が観客席に上がってきていた。
近くにいる女子たちは小さく声をあげて、白岩のキラキラオーラに圧倒されたのか後退りしていた。

そんなわたしも少し足が震えている。
恐怖とかではなく、緊張に近いものがある。

『白岩？』

瑠「ちゃんと見てた？俺の活躍」

　

『み、見たよ』

美彩も隣にいるのに、彼女は私たちをにっこりと見つめるだけで喋ろうとしない。
こんなに周りに人がいる中で二人だけで会話してるなんて。急に恥ずかしくなってきて顔を下げる。

瑠「どうだった？」

『かっこ、よかった』

じっと見られる視線にしどろもどろになりながらも答えると白岩が嬉しそうに口角をあげて、そっか、と呟いた。

瑠「送っていけないけど、気をつけて帰れよ」

わたしの頭をわしゃわしゃと撫でて仲間の元へと戻っていった。
そんな彼の行動に悲鳴をあげる子もいれば、さすが王子と感心している子もいた。

わたしはというと、美彩にバシバシ背中を叩かれながらその場に立ち尽くしていた。

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