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中学3年生のある日。
今日に限って日直の仕事が多くて長引いてしまった。
わたしは教室で待ってくれている美彩に一刻も早く謝らなきゃ、と階段を駆け上がった。
あともう少しというところでゼエゼエとした息を整えようと立ち止まった。
ゆっくりと教室に近づいたその時教室の中から声が聞こえた。
「……好きだけど」
聞こえてきた言葉に教室に入ろうとドアにかけた手を止めた。
告白じゃん、さすが美彩だなーなんて呑気なことを思いながら、相手の顔が気になってチラッとドアの窓から中を覗いた。
……すぐに見るんじゃなかったと後悔した。
美彩に言葉をかけていたのは瑠姫だった。
見なくても声で何となくそうかもしれない、と思ってはいたけど、まさかと思って確認してしまった。
ああ、なんだ、と身体の力が抜けたのがわかった。
わたしがどれだけ近くに居ても、彼の気持ちは他の誰かに向いていたんだな、と思うと変に納得してしまった。
そのあと、二人が何か会話のラリーをしていたけど、呆然としたわたしの耳に入ってくることはなかった。
盗み聞きをしていたと思われたくなくて、さも今着きましたというように足音を立てて「美彩ー？ごめんね！」と声を発しながら教室のドアを開けた。
すぐには二人の顔を見ることができなかった。
一瞬溢れそうになった涙を堪えて、ニッコリとそちらを見ると何だか二人とも気まずそうな顔をしていて、より傷を抉られた。
美「っお、おかえり！案外時間かかったね。鬼先に捕まったの？」
『そうなの！最悪だよもう。るっ、』
瑠姫はどうしたの？部活は？と声をかけようと思ったら彼は何も言わずにわたしの横を通り過ぎていった。
美彩はその様子を見て切ない表情をしていた。
『……瑠姫、どうしたんだろうね？なんかあったの？』
わたしはどうってことない表情でそう美彩に問いかけた。…上手くできていたかはわからないけど。
美「ううん。普通に今度の合唱のこと話してただけ。……帰ろっか！どっか寄り道する？」
美彩から何かを言われることは無かったし、明らかにその返答は嘘だって分かっていたけど、言いたくないことならそれ以上言及するのは違うと思ってやめた。
………そんなのは建前で、怖かっただけ。
知りたく無かっただけだった。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
