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5…4…3…2…1。
チャイムと同時に教室を飛び出した。
友達の美彩が「え、A！？△○×☆…」と何かを叫んでいたような気がするけど、心の中で全力で謝った。
そして恐らく授業を終えて靴箱に戻ってくるであろう先輩の元へ走った。
『はあ…っか、川尻せんぱーい！』
蓮「Aちゃん？大丈夫？」
息絶え絶えになっているわたしを見て、いつものようにキュイキュイ笑いながらも心配してくれる。
『大丈夫、です。体育お疲れ様です！これどうぞ！』
真っ白なタオルをサッと差し出す。
お母さんが最近変えた新しい柔軟剤のおかげで多分フワッフワになってるはず。
蓮「ん？これ使っていいと？俺一応持っとるけど………今日はありがたく使わせてもらおっかな」
いつものニコニコ笑顔で受け取ってくれた先輩にときめいていると先輩の後ろからひょこっと誰かが覗き込んできた。
奨「お、Aちゃん。今日も頑張ってるねー。俺にはタオル無いの？蓮にはあるのに？」
『與那城先輩もお疲れ様です！…タオル一個しかないです……すみません』
奨「あはは、冗談冗談」
蓮「奨くん、女の子いじめちゃダメでしょ」
奨「いじめてないよー。ね？」
『は、はい！』
川尻先輩に会いにいくたびにいつも隣にいる與那城先輩にも覚えられてしまい、今はこんな風に仲良くなった。そしてよく弄られる。
川尻先輩はもちろん、実は與那城先輩も女子の間では人気がある。
この二人は何故か自分のことになると疎くて人気があることを自覚していないらしい。
いまだって「川尻先輩かっこいい」「與那城先輩だ…」と見惚れながら呟いて通り過ぎて行く女子たち。
わかる。わかるよ…本当にかっこいいよね……と心の中で同意する。
蓮「俺らもやけど、Aちゃんそろそろ次の授業大丈夫？」
川尻先輩の声にハッとして時計を見る。
教室を飛び出したはいいものの授業間の休憩はとても短く、しかも次は移動教室だったことを思い出す。
『あ、やばい！次移動でした！じゃあまた！』
ブンブンと手を振って走り去ろうとすると、突然「あ！」と川尻先輩が声を上げた。
蓮「これ、ありがとね。また洗って返すけんね」
ふわふわのタオルにこてんと顔を埋めてにっこりして言う先輩は超絶あざとい。しかも本人はそんなつもりないのが一番怖い。
あー、こりゃやられたね、と與那城先輩の声が遠くで聞こえた。
ああ、今日もあなたが好きです。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
