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わたしには好きな人がいる。
3年生の川尻先輩。
彼はダンス部に所属していて、わたしがこの学校に入学した当初に部活紹介のステージで踊っていた。
…その姿を見て一目惚れした。
当時、川尻先輩は2年生だったけど実力は圧倒的だった。
長い手足を生かしたしなやかな踊りに魅了され、新入生みんながその美しさに息を呑んでいたと思う。
ーーーーーー
そんな衝撃的なステージからかれこれ一年が経った。
2年になって新しいクラスにも少しずつ慣れてきた今日この頃。
子守唄のような先生の声を聞きながら受ける古典の授業はそれはもう眠気を誘うものだったけど、チラリと窓の外に目をやった瞬間わたしの眠気は吹き飛んだ。
そこにはジャージ姿の川尻先輩がいた。
『今日もかっこいい………』
友達と喋りながらニコニコの笑顔で体育の授業を受けている。川尻先輩の魅力はダンスだけじゃない。
普段の彼はとにかく笑顔が素敵だ。
ぼーっと眺めていると先輩と窓越しに目があった。
笑ってフリフリと手を振ってくれたので、全力で振り返すと声こそ聞こえないもののあの特徴的な笑い声で笑っているんだろうなあという表情だった。
わたしと先輩との関係は、私の押せ押せ精神のおかげか仲良しの先輩後輩くらいにはなれていると思う。
よし、あとでタオル渡しに行こっと。
そんなことを考えていると後ろから声がした。
「おい」
ぶっきらぼうなあの声だ。
『な、なに？』
「早くプリント回せよ」
『あ、ごめん…』
知らぬ間に前の席の人によって置かれていたプリントを焦って回すとちっ、と舌打ちして奪われた。
幼馴染である彼はどうやらわたしのことが嫌いらしい。
高校に入る前あたりから、彼、白岩瑠姫はわたしに対しての態度がガラリと変わり、邪険になっていった。
何かしてしまったのかと考えたが、特に何かをした記憶は無い。
初めこそ不安になっていたが、ここまであからさまな態度を取られるともう理由なんてどうでも良くなってきて、わたしも白岩のことを苦手だなと思うようになってしまった。
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作者名：あい | 作成日時：2023年11月13日 20時
