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安らかなAの寝顔を見つめながら、その頬に触れるだけで落ち着かなくなる気持ちに、無惨はどうしたらいいのか分からず、ただそっとAの頬を指先で撫ぜる。
「…A、」
大切に名前を呼んで、壊れ物を扱うように優しく触れて、まるで満ち足りた中で生きてきただけのただの男のようだと、無惨はどこか戸惑いながらもAに触れる手を離すことはしなかった。
「ん…、」
「!」
無惨が慌ててAから離れるよりも早く、目を開けたAと目が合った途端、無惨はまるで縫い止められたようにそこから動けなくなってしまう。
「…あさ?」
何も言えないままにただ首を横に振って、再び閉じられていくAの瞳に安堵の息を吐いたのも束の間、無惨はいつの間にやら握られていたその手の温もりに、まるで致命傷を負った時のように全身が激しく脈打つのを感じる。
「…っ、」
半ば無理やりに手を引き抜こうとした瞬間、すっかり目覚めたAと再び目が合って、無惨は決して強くはない力でそのまま布団の中へと引き込まれる。
「…冷たい」
そう笑うAとは対照的に、無惨にとってAの体温は火傷してしまいそうなほどに熱くて、同じくらいに熱を帯びて震える己の吐息に、無惨はもはやその意味を考えることを放棄して、まるで温めるかのように包まれる両頬を無心で受け入れる。
「ふふ、」
今までで一番近くで見せてもらえるAの微笑みに瞬きすら惜しくなって、柔らかく細められる黒目がちな瞳が自分を映すのを、無意識に緩む頬に気付かないまま無惨は夢見心地で見つめる。
「…綺麗、」
きっと幻聴に違いないAの言葉を何度も頭の中で反芻して、無惨はなんて心地の良い夢なのだろうと、未だ離れていくことはない夢の続きに、そっと指先を絡ませた。
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大変長らく更新をお待ちいただいた皆様、ありがとうございます。
お久しぶりです。
久しぶりに開いたら、お気に入り登録やらコメントやら、通知が沢山で嬉しくて、、
また少しずつ更新を再開できたらと思います。
これからも、どうかよろしくお願い致します!
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明珠(プロフ) - 梨さん» コメントありがとうございます!そしてお返事が遅くなった私のために2回もコメントしていただき、嬉しい限りです。これからもよろしくお願いします!! (10月22日 13時) (レス) @page28 id: 188ff08a0d (このIDを非表示/違反報告)
梨 - 星が赤くなった! (10月1日 15時) (レス) id: cdc22d5592 (このIDを非表示/違反報告)
梨 - 尊いです、、 (7月17日 5時) (レス) id: 885e152231 (このIDを非表示/違反報告)
明珠(プロフ) - 瑠音さん» コメントありがとうございます!!これからも溺愛してもらいますので、最後までお付き合いいただければ嬉しいですっ (6月8日 22時) (レス) id: 188ff08a0d (このIDを非表示/違反報告)
瑠音 - 溺愛無惨様最高です (6月8日 19時) (レス) @page14 id: 0b8cc5461c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:明珠 | 作成日時:2023年5月30日 12時