17 ページ17
・
無限城に戻ってきたAたちは、「あの人に見つからなくて良かったね」と笑い合って、行く時と同じように琵琶の音で部屋に戻る。
「今日は幸せすぎた〜」
本当にありがとうね！とまさか無惨とは知らずに女性に抱きつくAは、「体調悪くない？大丈夫？」と未だに先ほどの事を気にしているのか、ぺたぺたと彼女の頬を触る。
「…本当に大丈夫なの？」
何度もうなづく女性に、確かめるようにその顔を見つめるAは安心したように離れていって、あれこれと女性に買い与えられてしまったものたちを大切にしまい込む。
「…お姉さん、こんなに沢山ありがとうね。…あれ？」
Aがお礼を言いながら振り返ると、そこにお目当てのお姉さんの姿はなくて、代わりに音もなく開いた障子から無惨が部屋に入ってくる。
「…。」
先ほどまでの雰囲気はどこへやら、今すぐ逃げ出したいほどの重い空気に、「昨日は、すまなかった」と無惨が申し訳なさそうに口火を切る。
「…、私こそ、ごめんね。怒らないって言ったのに」
「…私が悪い」
なかなか上げられない視線はよく掃除の行き届いた畳を映して、窺うように無惨が顔を上げるとちょうどこちらを見ていたAと目が合って、分かりやすく身体が強張ってしまう。
「私はお前に、危害を加えるつもりはない」
「…うん」
「全て、Aの言う通りにする」
「うん、」
彼なりの謝罪のつもりだろうか、何度も瞬きを繰り返しながらそう言う無惨は、それ以上は何も言わず、緊張した面持ちでAを見つめる。
「…じゃあさ、」
考えるようにそこで言葉を区切るAに、無惨はどんな要求でも受け入れてみせようと密かに覚悟を決める。
「…まず、人殺しはもう、やめよう？」
Aの言葉に一呼吸おいてうなづく無惨は、それだけでAへの償いとなるのだろうかと不安げにAを見つめる。
「それだけ約束できるなら、…私、ずっとここに居てあげるよ」
「！…本当か？」
「うん」
Aの返答に意識するよりも先に嬉しそうにふわりと微笑んだ無惨は、この顔は女ではなかったのだと後から思い出して、慌てて唇を引き結ぶ。
「！」
そんな無惨をもちろん見逃すはずもないAは無惨の両頬を掴んで、「貴方、笑えたんだ…」と驚いたような表情で無惨の顔を覗きこむ。
(このまま次話に続きます)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 439人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
明珠(プロフ) - 梨さん» コメントありがとうございます！そしてお返事が遅くなった私のために2回もコメントしていただき、嬉しい限りです。これからもよろしくお願いします！！ (10月22日 13時) (
レス) @page28 id: 188ff08a0d (このIDを非表示/違反報告)
梨 - 星が赤くなった！ (10月1日 15時) (レス) id: cdc22d5592 (このIDを非表示/違反報告)
梨 - 尊いです、、 (7月17日 5時) (レス) id: 885e152231 (このIDを非表示/違反報告)
明珠(プロフ) - 瑠音さん» コメントありがとうございます！！これからも溺愛してもらいますので、最後までお付き合いいただければ嬉しいですっ (6月8日 22時) (レス) id: 188ff08a0d (このIDを非表示/違反報告)
瑠音 - 溺愛無惨様最高です (6月8日 19時) (レス) @page14 id: 0b8cc5461c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：明珠 | 作成日時：2023年5月30日 12時
