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「…ん、」
微かな人の気配にAが目を覚ますと、ドアの隙間から漏れ出る明かりに、悟が帰ってきているのだとAは起き上がる。
「…ああ、」
布団から出ようとして自分が下着姿であることを思い出したAは、悟のクローゼットを漁り手頃なシャツを着てリビングへ向かう。
「ごめん、悟。お風呂入らないでベッドに入った」
「ああ、別にいいよ」
そう言って、Aが寝ている間自分が食べたものと同じものを袋から取り出した悟は、「食べる?」とAを見上げる。
「うん、ありがとう」
普段は座らない悟の隣に座って手を合わせるAに、悟は物言いたげな瞳をAに向けるも、結局何も言わずにテレビに視線を戻す。
「…そういえばね、」
「ん?」
ご飯の蓋も開けずにそう切り出して視線を落としたAは、割り箸を指先で弄びながら「…あのね、」となかなか本題に入れずためらう様子をみせる。
「…今日、傑に会った」
Aの言葉になんとなくそんな気もしていた悟は驚くことはせずに、「…僕とのこと、気が変わった?」と相変わらず視線を落としたままのAをじっと見つめる。
「ううん。それより…、悟が、本当に最強で優しい人なんだなって…」
そこで言葉をつまらせ唇を噛み締めたAは、何かを堪えるように瞬きを繰り返して「…傑はきっと、優しすぎたんだよね」と声を震わせて、ようやく悟に目を向ける。
「この世界は、傑には残酷すぎたんだね」
きっとこれが最後であろう、傑を想って流すAの涙を見つめながら、悟は適当な言葉が見つからずにただそっとこぼれ落ちるAの涙を、指先で掬いあげる。
「私が、もっと強かったら良かったのに」
自分も何度繰り返したか分からないその言葉に、悟は無意識のうちに握りこんだ拳を、再びAの涙を拭うためにゆっくりと広げる。
「…悟なら、どこまでも私を一緒に連れて行ってくれるよね?」
「…もちろん」
悟の言葉に安心したように笑ったAは、自分の涙を拭っていた悟の手を掴み頬を擦り寄せ、「…大好きだよ」と大きなその手のひらにそっと唇を寄せる。
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明珠(プロフ) - Mamiさん» ありがとうございます!良かったですー! (2022年6月3日 10時) (レス) id: 64ad7b0890 (このIDを非表示/違反報告)
Mami(プロフ) - 明珠さん» 全然面白いです! (2022年6月2日 16時) (レス) @page33 id: a64b7436ba (このIDを非表示/違反報告)
明珠(プロフ) - Mamiさん» こちらこそありがとうございます!なんとか行けるところまでいってみましたが、どうでしょうか、、?違うものが始まりそうになって強制終了させてしまったので、物足りないかもしれません、、 (2022年6月2日 16時) (レス) id: 64ad7b0890 (このIDを非表示/違反報告)
Mami(プロフ) - 明珠さん» レス返して頂きありがとうございます!例えば激しいキスとかはどうかなぁ…と思いまして…。そう言うのが嫌でしたら無理には言わないですが… (2022年5月31日 22時) (レス) @page31 id: a64b7436ba (このIDを非表示/違反報告)
明珠(プロフ) - Mamiさん» はじめまして!コメントありがとうございます。読解力がなくて申し訳ないですが、具体的にイチャイチャ至る所、というのはどういうことでしょうか、、?? (2022年5月31日 12時) (レス) id: 64ad7b0890 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:明珠 | 作成日時:2022年4月30日 23時