【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ4)

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開口一番がこれってどうかと思うわ。うん。いや、俺が言ってんだけどさ。

ベッドの傍まで近づくと先輩の足元にある掛け布団を引っ掴んで、自分の上履きを脱ぐとベッドに体を滑り込ませる。体をベッドに預ければ息がかかってしまうほどの至近距離に先輩の顔があった。

「布団くらい掛けて寝れば」
『いずみを待ってたんだよ』
「先生は」
『会議』

近いのもあるせいかお互いいつもより声量を落として話す。すると声が篭って耳を掠める度、なぜか居心地が悪くなる。それを誤魔化すようにふと目についた黒髪に手を伸ばし、梳いたり指にくるくると巻いたりして遊び出す。

『それ面白い？』
「どーだろ」
『分からんのかい』
「けど俺、Aちゃんの髪好きだよ」

『眠くなりそう』
「そのつもりできたんじゃないの」
『いや、いずみがきたら満足した』
「なんだそりゃ」

ふと考えて、ああそういうことかと理解した。

「また別れたの」

この人は誰かと付き合えば俺に決して連絡は寄越さない。相手に誤解を招くことをやるのは相手に失礼だからと相手がいる時は基本連絡は来ないし、俺からもしない。けれどもし連絡が来た時は別れた時か誰とも付き合っていないフリーの時だ。この場合はきっと前者だろう。

『……振った』
「え、珍しい。てか初じゃない？振ったなん、
…どうしたの」

言い切ろうとするとAちゃんは俺の首に手を回すと少し力を入れて抱きついてきた。足さえも絡めてきて逃さないと言わんばかりだ。なんとなく意図が読めてきた俺はその人の頭を撫でたり梳いたりしながらもう一度「どうしたの」と問いかけた。

俺の肩に顔を埋めたAちゃんは『うーん』と唸って頭をぐりぐりと押し付けてくる。くすぐったい、と体を離そうとすると更に力を込められてそれは叶わなかった。代わりに返ってきたのは先程の質問への答えだった。

『理解してはくれないって分かって、……耐えられなくなった』

この人は、きっと理解してほしいんだろう。自分という人間を。それを他のどんなことよりも望んでいる。それがたとえ友達だろうと恋人だろうと形がどうであれ自分が望んでいるものがそこにあればそれでいいのだろう。

ーーーああ、そうか。

「さびしいの」

見開かれた目にあ、図星だと思った。確信はしていたけれど、あくまでそう言ったのはなんとなくだった。

『………………なんで』

「……なんでだろ」

分からない。俺に聞かないで。

急に近づけられた顔に俺は目を伏せると、押し当てられた唇と共にその人の制服の中に手を入れた。