【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ3)

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「やべえ。俺、毒されてる」

ああ、くそっ。ニヤけるな。負ける。それだけは駄目だ。と上がる口角を抑えようと口元を覆った。けれどそれは解決ではなく応急処置みたいなものでどうしたものか、と悶々とする。

そんな俺を知ってか知らずか。この人は間の抜けた声で『いずみぃ』と呼ぶもんだから思わず呆れて「なんすか」とそっちを向いてしまった。すると俺の頬をその人の人差し指がつついた。

「……なんすか」
『いいじゃん。拒む方が疲れる』

じっ、と見つめあって俺の息が詰まるのを見計らってか小さくもあり大きくもある葛藤を真っ向から否定するかのようにロリポップが口に突っ込まれた。
……おいこれあんたがさっきまで舐めてたやつ。またあんたのおさがりかよ。まあ、いいけど。

『疲れるのはあたし嫌いだもん。出水は？』
「……俺も。」

間違いない。

まあ、それは俺の負けを意味するのだが。

「いやだめだろ」
「なにがだよ」

それだけはまずい、と慌てて顔を上げるとそこにいたのは拒むことなく手招きしてくるあの人ではなく訝しげにこちらを見ている佐藤だった。そして理解した。あ、さっきまで授業だったのか、と周囲を見まわすと「授業なら終わったぞ。丸々寝てたなお前」と続けられた。

俺の前の席に腰を下ろした佐藤に「マジか」と欠伸をしながら言うと、机の上に申し訳程度に広げられていた落書きだらけのノートを閉じると机の中に無造作に放り込んだ。

あれから2週間。先輩からのメールや電話での呼び出しは全くなく、至って何事もなく時間だけが過ぎていた。あの会話をした2週間前を最後に先輩とは顔を合わせていない。そもそも校舎も違う上にあの人と会う時はメールで呼び出された時くらいなのでそのメールさえ来なければ会う理由もなくなるというもの。

と、その時制服のズボンのポケットに入っている携帯が鳴った。メールの差し出し人を見た瞬間噂をすればなんとやらだと思った。お前携帯切っとけよ、と呆れとも取れる佐藤からの忠告に俺は空返事をするだけで視線も思考も表示されたメールに釘付けになってしまった。

ーーー保健室にいる。 A

「…」
「どうした？」
「わるい。俺、さぼるから先生にうまく言っといて」

戸惑って呼び止めようとする佐藤を尻目に、俺は足早に保健室に向かった。

『……あ。ほんとに来た』

保健室にある３つあるベットの内締め切られているカーテンを捲ると、そこには寝そべって携帯を見るその人がいた。

「パンツ見えてんぞ」
『見せてんだよ』
「変態か。捕まれよ」