【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ17)

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いいや、元々それは私の中に混在していたのだ。間違いなくそれはそこにあって生まれてきてから今日まで厳重に封印されていたものに過ぎないのだ。目に入れても痛くない程の幼子を育てるかのようにそれを大事にしまい込んで、自分にさえ気づかれないように大事に確実に育ててきたのだ。

それに気づけば案の定私は絶望した。それが分かっていたから私自身にさえ気づかれないように自分はそれを隠して育ててきたのだ。こんなものを育てるために私は自分自身を騙してきたのかと思うと一層虚しくなった。

「やっぱこないだのこと根に持ってんじゃん」
「持ってないわよ。そんなことで根に持つほど私の器は小さく出来てないわ」
「じゃあ、なんでそんな不機嫌そうなんだよ」
「苛立たせてるのは確実に出水よ」

いやそれは知ってるけど、と返す出水に「なら教えてよ」と催促した。まるで教えてくれたら機嫌を直しますよ、みたいな言い草に出水は一層眉間の皺を深くさせた。不愉快だ、そもそも私がなんでこんなに知りたがってるのか分からない、どちらともとれる視線に私は心中をドギマギさせた。

「何言っても牧田さんの機嫌は直らない気がするから言うけど、俺が秦野さんのことをどう思っていようと牧田さんには関係がないってことは確実だから」

ぴしゃり。線引きをされた。なにを言われるかと思えば拒絶の意を表されてしまった。

「どう？聞いて教えてもらった感想は。
おもしろかった？」

ああ。これは仕返しだ。つまるつまらないは私が決める事でお前が決める事ではないと言ったことへの仕返し。平手打ちを100も200も倍にして返された気分だ。いよいよ侮蔑の色を確実なるものとして顕し出した出水の瞳を見て、呆然とした。ああ、やばい。私今、軽蔑されている。その視線だけで出水は私を蜂の巣にした。

それ以上なにか言うでもなく、出水は私に背を向け屋上から去ってしまった。

がしゃん、と重たい音を立てて出水によって閉められた屋上の扉に私は項垂れた。これ以上入ってくるな、という線引きを今度は明瞭に、そして物理的にされた気がした。私は野次馬心であんなことを聞いたわけではない。そんな下心は微塵もなければ、仮にあったとしても出水にそんな心を抱いているなんてことがあれば舌を噛んで死んでやる。

野次馬ではない。振られ続けてる秦野への心配もあった。でもそれ以上に私をこんな行動にまで移させたものは別にあったのではないか。なんて、それならば一生野次馬だと思っていた方がマシだと思える答えに辿り着きそうになった。