【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ14)

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ep.02.「ガール・ミツ・ボーイ」ページ14

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ーーー私は、出会ってしまった気がする。

この上なく恐れるに足る存在に。

「つまんねえよ
少なくとも俺の答えは」

この言葉を聞いて無性に苛立った。いいや、落胆の方が強かったのだろうか。別にしまった、と口を抑えた出水が私の顔色を伺おうとしたことにではない。自分の中にあるものを1番分かっているはずの出水がそれを"つまらない"という言葉で片付けようとしたことに、きっと出水という人間なら隠すこともせず堂々と答えてくれることを期待していたばかりにこの返答。

「やっぱいい。聞かない」

そう、一瞥した瞬間だった。出水の顔は誰がどう見ても惚けていただけにしか見えなかっただろうが彼は私からの"聞かない"という言葉を引き摺り出した瞬間に心底安堵したかの様な顔をしたのだ。それが故意なのか無意識なのかは私には分からない。けれど、どうであろうと私には耐えられなかった。耐えられなくて堪らずこう言った。

「出水ってほんと嫌味なやつよね」

そして今度こそ出水は呆然とそこに立ち尽くした。訳が分からない、そんな顔をしている出水に舌打ちをしてやりたくなったがそうしてしまう前に私はその場をあとにした。

「はあ、また振られちゃったー！」

周りを憚らずに大声で叫ぶのは同じ隊に所属している秦野八生(はたのやよい)。私はわんわん叫ぶ秦野に「これで何回目？」と呆れ問いながらラウンジで買ったサンドイッチに齧り付いた。

「まだ8回目だし！」
「8回目をまだとは言わない」

向かい合って座る秦野は「またそんな冷たいこと言う！」と更に声を上げながら足をバタつかせるためその足が故意でなくとも私の足を蹴り付ける。取り敢えず落ち着かせることが1番だと思い立った私はまず秦野を煽てることから始めた。

「秦野はかわいいんだからあんな男よりいい男がいるよ」
「……ほんと？」
「ほんと。なんで落としたハンカチ拾ってもらっただけで惚れるかな。もっと慎重に相手を見なよ」

「めちゃくちゃカッコよく見えたんだよ！」
「フィルターっていう恋の魔法はね直ぐにとけるんだよ。あんた前に出来た彼氏だってしつっこく付き纏ってやっと付き合えたってすぐに蛙化だ！って別れたじゃんかよ」

「それを言わないでよ」
「懲りてない証拠よ」

図星を突かれ、黙りこくってしまう秦野はバツの悪そうな顔をしてコーラを啜った。今日は休日の上昼間ということもあり人目もある。ちらちらとこちらを窺いながらくすくすと笑っているやつらに睨みをきかせようとしたそのとき。

「あ、牧田さんだ」