【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ11)

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それから俺は20分ほどかけてノートを書き上げ、今現在職員室に向かう廊下を牧田さんと歩いていた。

「ごめん、任務間に合う？」
「大丈夫。間に合わないなら出水置いていってるから」
「あ、そう」

全然大丈夫そうでなにより。

分かりにくいかもしれないが牧田さんは先ほどよりも明らかに機嫌を損ねている。まあ、検討をつけるまでもないことだが、理由は俺が抱えているノートの束だろう。

教室を出る前のことだ。「ノート持つわ」と声を掛けると、あからさまに嫌そうな顔をされ「……うん」と謎の間をあけられたのだ。俺は牧田さんの斜なご機嫌より謎に間を取られたことに疑問を感じる。

参ったな。こうもあからさまにシャッターを下ろされてるのは中々ない。いやここで燃えるぜ、もっと仲良くなってやるなんて言えたらいいんだろうが、んなキャラじゃねえし。……段々面倒になってきた。

もういっそのこと理由をつけてさっさと帰るか。このままではボーダーに辿り着くまで牧田さんと一緒である。それはそれでちょっと遠慮したいものだ。

それにここで俺が先に帰ると言ってもきっと牧田さんはなにも言わない。なにかあるとしたら彼女の中で俺の好感度が更に下がるくらいだ。元々あるかないかも分かんないようなもんが、下がることを気にしたって仕方がない。

よし、とんずらすっか。と思い立ったそのとき、牧田さんが、なにかを思い出したかのようにねえ、と声を上げた。

「なに」

半ば即答のような返事に一瞥をくれた牧田さんは、バツの悪そうな顔をして口籠もっている。なんだ、そっちから声をかけてきたわりにはうんうんと唸っているだけか。物事はなんでもはっきり口にする牧田さんにしては珍しい。

「本人に聞いていいか分からない
言葉を慎重に選んでるからちょっと待って」

聞いていいか分からないと言う割に言葉を慎重に選んでいる、なんてそんな矛盾に少し笑ってしまいそうになる。聞いていいか分からないと言っているのに気にはなるので俺の気分を害さない聞き方を模索しているのだろう。

「いやまあそれはいいんだけどさ」
「なに？」
「職員室着いたけど」
「あ」

模索するのは別に構わないのが目的の職員室に着いてしまったため俺は抱えていたノートの束を牧田さんに渡した。すると恨めしそうに俺を睨め付けた牧田さんはノートの束を俺から受け取り職員室の扉を開けた。

「……勝手に帰らないでよ」
「へいへい」

益々帰りたくなってきた。というのは口には出さなかった。