【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ2)

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「またかよ」

職員棟の2階にある空き教室。一応昔は使われていたようだが、今や物置となっているここは俺とAちゃんのサボり場所の１つとなっている。

『今月3人目でございます』
「5人目の間違いだろ。ばか」
『あり、そうだったっけ』

今はまさに5限目の真っ最中ではあるが、この人に携帯で呼び出されては行かないわけにもいかずこうして指定の空き教室に出向いたわけだが。扉を開けた次の瞬間放たれた言葉は

ーーー別れた。

だった。そして冒頭に戻るというわけだ。
…………はあ、帰りたい。

『あげる。もういらない』
「………飽きるなら買うなよ」
『じゃあいらない？』
「いる」

即答かよと歯を惜しげもなく晒して笑うこの人に無造作に手渡されたカフェオレ。いやだってそうだろう。このカフェオレには一切罪はない。寧ろ一口飲んで飽きられたのだから憐れむべき飲み物だ。

『あんたなにそんなカフェオレ見つめてんの？
口説きたいの？？惚れられるよ？？』
「まじかよ。俺のどの辺にこいつ魅力感じてくれたんすかね」
『そういうとこじゃね』
「やっぱりか」

するとどこから出したのか気がつくと先輩の手には今度はロリポップが握られており開けて、と手渡された。へいへいとてきとーに返事をしてロリポップの包装を剥ぎ先輩の口の中に突っ込んだ。

『いひゃい』
「そりゃよかった」

聞くところによれば別れた原因はこの人が彼氏さんのかまちょに一切反応しなかったことにあるらしい。なんで彼氏さんはこの人が反応すると一回でも思ったのか。甚だ疑問だ。

「かまちょってなに」
『浮気ドッキリ？みたいな』
「あーそれは向こうが悪いわ」

『あり、なにどうした。
私の肩持ってくれんの？』
「じゃなくて。相手間違えんなよってはなし」
『おい』

「かわいそうに」
『………どっちが』
「想像力の乏しい彼氏さんが」

そう口にした直後だったか。怒った？、なんて聞いてしまったのはなんとなくだった。焦りが出たのだ潜在意識に。自分でも気づかない焦りが。

その焦りが急に馬鹿らしくなったのは目の前にいる女と目がばちりと合ったせいだ。合ったその瞬間からなんとなく腹の中でこの人がどう返すのか分かってしまった気がした。……馬鹿みてえ。

『なんで？』

心底不思議そうに聞き返してくるもんだからもう笑うしかなかった。やっぱりそうだ。そうだったのだ。この人はブレない。くらりと脳が揺れた。目眩さえする。ーーーこの人の中から奴が残滓すら許されず消えていることに。

「やべえ。俺、毒されてる」