【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ1)

今日:19 hit、昨日:34 hit、合計:8,095 hit

▼あのひとページ1

.

ーーまた振られた。

そう口にした人物は泣くでもなく、振った相手の愚痴を言うでもなく、おっかしいなあ、とヘラヘラしながら後頭部をかいている。どうせ次に口にするのは「まあ、いいか」だ。この人の話は真面目に聞く方が馬鹿を見るということは知り合った時点で把握済みだ。

『まあ、いっか』

予想に反しない発言の後、いずみん次誰にしよー、と窓の外で部活をしている人たちのを品定めしているそのひとには呆れてため息も出なかった。俺、出水公平がこの人、2つ上の先輩である鈴木Aと知り合いの域に達したのはつい1週間前のことだ。

来る者拒まず、去る者追わず精神のこのクズな先輩は元々校内では有名だったため、俺も名前くらいは知っていた。だが、実際に顔を合わせたのは1ヶ月前先輩が昼休み裏門から重役出勤しているとこを友人である佐藤が「あれ、クズで有名な先輩だ」と目撃したときだった。

何せ、3年と1年では校舎が異なり、加えて行事事にこの人が真面目に参加することがなかったこともあり1ヶ月前までは顔すら知らずにいたのだ。なんと縁のない。

そう思っていたのが一変、今は「シンユウ」などと豪語されている始末。なにがそんなにこの人の琴線に触れたのか、心当たりのあるあの時はただこう言っただけだ。

ーーーあんたクズっすね。

なんならクズを強調して言ったくらいだ。するとこの人は腹を抱えて笑い出したのだ。そして続けて言った。そんな私が好きなんだってさ、と。こんなん最早格言か名言(迷言)だわと思うぐらいに堂々と。この時だ。あ、これ真面目に聞いても馬鹿をみるだけだと悟ったのは。

「今回はなんつって振られたの」

えー？とにたにた愉快そうだ。そして『なんだと思うー？』と。当ててみろってか。つか、質問を質問で返すその癖やめてほしいもんだ。

「やるのが下手」
『下手言うな。つか今回のやつとはやってないし。
つかあたしが萎えたし』
「へえへえ。じゃあなに？」

『思ってた奴と違ってただってさ』
「なんだそりゃ」

あほらし、と言いたくなる理由だった。というか言った。

「ソイツ器ちっさくね」
『ちょー直球じゃん。ウケる。
じゃあそういういずみんは受け入れてくれんの』

試すように。探るように。

ーーーあ。ちょっと期待してる。

「なにそれ萌える」
『どこにだよ』

「案外子供なんだなって、Aちゃんが」

世の男共がクズだと分かっていてもこの人に近づきたくなる理由が分かった気がした。