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掘り起こされるのは、
キミしか見えていなかったときの記憶。
『ねえ。角名』
「どうしたの」
『恋っていうのはね、その人のためになら
なんだって捨てられるのよ』
どうしたのいきなり、なんてそんな問いは今更で。
彼女はいつだって突然だから。
『その人が望まなくてもね』
諦めた様に笑うAのその瞼の奥映るのは、
決して俺ではない人。
でも、そんなの気にすることではない。
「じゃあ、Aは
俺のために、なにかを捨てられる?」
だって、
『…もう、とっくに捨ててる』
彼女が瞼の奥に映した人間の為に捨てられなかったものを俺は捨てさせたのだから。
「なんで、そんなこと言うん」
(……ああ。しまった。)
ただ、そう思った。
言葉を間違えたとは思わない。
けど、一つだけ、これを言っていいタイミングは今ではなかったのだと、失敗したなと思った。
「…しゃべり過ぎた」
「治がそう言ったん?
Aのことが好きや、って?」
それは責めるように、
否定しろと言いたげに目で訴えてくる。
「言われなくても自然と分かるんだよ」
けど、どうしようもない事実なのだ。
Aと付き合ってた時からそんな気はしていた。
治が時折どこか別のところを見ていることがあって、その視線の先にはいつだってAがいた。
もしかしたら、なんてのを考えたことがあった。
けど、Aは俺しか見てないから大丈夫と、優越感ばかりでいつも考えるのを途中でやめてた。
だからその優越感がなくなったとき、放棄してきたものを考えざるをえなかった。
「岸本は、それでも左藤さんと友達でいられる?」
これは八つ当たりだ。
純粋に治を思っている岸本に対して、羨望した。
俺のは、恋でも愛でもなく、ただの依存だったから。
ただ、羨ましくて。
「多分、岸本は友達なんて簡単に捨てられるよ
たとえそれが左藤さんであっても」
ごめん。岸本。
……恨んでいいよ。
「恋っていうのは、
その人のためにならなんだって捨てられるんだって」
どうしようもない
「その人が望んでなくても」
ただの、嫉妬。
「さいってー」
今、瞼を閉じて、その奥に映るのは
決まっている。
『…じゃあ、角名は?
私のためになにを捨てる?』
「捨てるものがない」
『家族は?』
「俺が捨てたら、将来困るじゃん
結婚式とか」
『…え?』
「初めて本気で好きになったんだよ
離すなんて、考えらんない」
『っ、いいよ、角名は
なにも捨てないで』
守れもしない約束をした。
そして、
ーー永遠を、信じた。
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グリム(プロフ) - ヤバイ、凄く引き込まれる！次の投稿待ってます！ (1月30日 17時) (
レス) @page13 id: 66f712e8a8 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 切ない……切なすぎる…。更新ずっと待ってます‼ (10月15日 20時) (レス) @page13 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
百合(プロフ) - んごおああああああああ(叫び声)めためた切ない(´；ω；｀)次の投稿永遠に待ってます！ (6月18日 19時) (レス) @page13 id: 587110230b (このIDを非表示/違反報告)
めぃ(プロフ) - ほんとに最高です！主人公ちゃんへの感情移入凄すぎてしんどいです…(泣) (2022年7月24日 5時) (レス) id: 1ba6cd66fa (このIDを非表示/違反報告)
みるきーばなな(プロフ) - うはぁぁぁ、切ねぇぇぇ、、、ッッ！読みながら涙腺崩壊しそうになったぞおい、、（涙） (2022年7月15日 8時) (レス) @page13 id: bfe5e9257b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チェスター | 作成日時：2021年7月5日 12時
