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「……」





「……」





「……」





「……」





まるで耳栓をされた耳の中のように、静かだった。





この部屋に入ってから誰も喋らないし、





動こうともしない。





そんな沈黙を破ったのは私のおかしな一声だった。





「私は、義勇さんが大好きです」





何故こんな言葉を言ったのだろう。






私は冷や汗をかいている背中を





思いっきりまっすぐに伸ばし、





震える口を頑張って開けた。





「義勇さんとは数年前に実弥が招待してくれた





集会で出会いました。





それから一緒に時を過ごしていくに連れ、





彼と一緒にいたいという気持ちが





自分の中で大きくなり、





彼からの告白を受け、今に至ります」





私の目はしっかりとお母様を捉えていた。





全神経を集中させたら





お母様の心が読めそうなくらい





彼女の目は彼女の心を語っていた。





「貴方、お名前は?」





「冨岡義勇です」





「そう」





それからまた沈黙になる。





今度は誰が沈黙を破るのか、そんな事を考える。





「僕、Aさんと結婚しようとは思っていません」





……え。





「義勇さん?」





「たとえ僕がどんなにAさんのことを好きでも、





結婚をしようとは思いません」





視界がぼやけ、温かい水が頰を伝い、





それが口へと入り込んでくる。





塩っぱい。





「僕は物語で言うところの脇役です。





誰かに恋しても叶わない。そう言う者です」





淡々と義勇さんが語る中、





私はただ彼の横顔を見つめ、





頰に流れる涙を拭い、





必死に声を抑えていた。





「なので僕は





Aさんと不死川さんが結婚するのを





見届ける役です」





「待って義勇さん!」





「ですが、僕は彼女を心の底から愛しています」

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名無しになりたいフリー好き(プロフ) - ぎゆさんであってほしいです! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 58278cc77e (このIDを非表示/違反報告)
彩兎(プロフ) - 実弥に一票お願いします! (2019年9月24日 0時) (レス) id: 429c03534f (このIDを非表示/違反報告)
らら。(プロフ) - lemonさん» 楽しみにしててください♪ (2019年9月17日 19時) (レス) id: cb640d9e01 (このIDを非表示/違反報告)
らら。(プロフ) - 灰チャンさん» がんばります(^^) (2019年9月17日 19時) (レス) id: cb640d9e01 (このIDを非表示/違反報告)
lemon - 不死川さんになっていることを願うばかりです笑結末を楽しみに待ちながら読ませて頂きます (2019年9月17日 9時) (レス) id: dbf4967350 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らら。 | 作成日時:2019年9月14日 15時

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