【A3!】運命のあの日から (ページ12)

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☆正論ページ12

「ありがとうございました！」

凄い中途半端な所で演劇は幕を閉じた。

「酷い脚本だな」

我慢が出来なくなったのか
口を開けば嫌事を言う男。

( … まぁ同意見なんだけどさ)

それでもあいつは楽しそうに演じてたし
終わったあとも、嬉しそうに笑みを浮かべてた。

「さて、もう終わったんだ。取り壊すか」

男の考えはどうやら変わらないらしい。

「ええ！？
あんな頑張ってるお芝居を見た後で鬼ですか！」

僕の隣に立っていた女の人が
男の人に言い返し、止めに入る。

「 … 頑張ってる？」

男の目付きが変わった気がした。

「そうですよ。まだまだ未熟だけど気持ちは伝わってきました」

「頑張ってる芝居が見たければお遊戯会にでも行けばいい。

これは発表会か何かか？
頑張った成果をお披露目する場か？

プロが金を貰って客を楽しませる場だろ」

「それはそうですけど、あの子だって頑張ればきっと…」

男の的確な指摘に
勢いがなくなる女の人。

「この世に努力だけでどうにかなるものなんてねぇんだよ」

「 ……… 」

厳しい言葉だが、これが“ 正論 ”なんだと思う。

俺も前に似たようなこと言われたっけ？

…思い出したくもないけど。

「もう分かっただろ。この劇団がビロードウェイで生き残れる可能性なんて、万に一つもないってことくらい」

論破ってやつだと思う。

これには言い返せないだろって思ったけど、それでもまだ口を開くお姉さん。

「確かに、ビロードウェイのレベルは高いし、この劇団のレベルは果てしなく低いけど… 」

「だったら、話は終わりだ。この劇団は潰す」

お姉さんの話はまだ終わってないだろうに
無理やり終わらそうとする男。

「えっ？この劇団無くなっちゃうんですか…？」

なんとタイミングの悪い奴…。

この様子だと何も知らなかったみたいだな。

「 … 」

「すみません、今、話が聞こえちゃって…
オレ、昨日この劇団に入ったばっかりなんです！

まだまだ演技も下手くそだけど、舞台が大好きで、だから、潰さないでください！」

「断る」

「そんな！」

この男には迷いなんてない。
壊すことを目的としかしてない。

…なんてね。